小説

□『ねこ』じゃないもんっ! U (1日目)
1ページ/16ページ

『ねこ』じゃないもんっ!のつづき。

※大人綱くんと子供雲雀さんのパラレルファンタジー・雲雀さんに耳としっぽがついています。また、サブカプ扱いで ありえへんようなカプが複数登場します。【白蘭×大人雲雀】【アラウディ受】など※

ご注意:初代時代のキャラが現代にしれっと普通に生息していますので、違和感ありありのカポーが登場します。
捏造度MAXです。




ぱたぱたぱた…と黒いお耳としっぽを揺らしながら子供が駆けてくると、黒い着流しの着物を着た人が、うっすらと微笑んで子供を抱き上げました。
その人は子供と同じように黒いお耳としっぽがついていて、容姿もたいへん子供に良く似ておりました。

「あのね、あのね。ぼく、今日、つなよしにお口にちゅーされたの!」
一瞬驚いたように瞳を見開いたその人は、小首を傾げて子供の顔を見つめました。
「……無理やりされたの? 嫌だった?」
子供はきょとんとした顔でその人を見返すと、ふるふると首を振りました。
「ううん、無理やりなんて、されてないよ。いきなりだったけど、びっくりなんかしてないんだからねっ。つなよし、ぼくのことが大すきなんだって! だからとくべつにゆるしてあげてもいいよって、ぼくからもちゅーってしてあげたの。」
「そう。」
ふわっと花が綻ぶ様に笑うと、その人は子供の髪をゆっくり撫でました。
「特別に、『好き』になるのを許してあげたの?」
「そうだよ。つなよし、ぼくがみててあげないと、いつもドジばかりして、だめな子なんだから!」
「そうなの。………じゃあ、色々と手配しなくちゃだねぇ? しばらくは『つなよし』のところには行けないよ。少しの間、我慢してて?」
子供はぱちぱちと瞬きを繰り返して、こてんと首を傾げました。
「おさんぽのついでに、よっちゃだめ? あの道は、ぼくしかとおれないから、あぶないことなんか、何にもないんだもんっ!」
「うん。それでも駄目だよ。ちょっとの間だから辛抱して。すぐに、『つなよし』のほうから会いに来てくれるから。」
約束ね、とその人に言われて、子供はしぶしぶながらこくんと頷きました。



「ふふ…。『つなよし』……さわだ、沢田綱吉。イタリアのボンゴレの十代目ボスだっけ。これは楽しくなってきたねぇ。とりあえず向こうに通じてしまっている『浮き道』を塞がないと、あの子が我慢できずに会いに行ってしまうかも。早速準備に取り掛からなくちゃ。」




◆◆◆




最近楽しそうに朝食の時間を心待ちにしていたボンゴレ十代目の綱吉ですが、ここのところ元気があまりありません。

「うう〜、今日も来てくれませんでした…。」
はぁーとため息をついて肩を落とす綱吉の横で、嵐の守護者の獄寺と、雨の守護者の山本が心配そうに見守っています。
「そうだなー。ヒバリ、結局今日も来なかったのな〜。もう1週間になるっけ?」
山本の言葉に、綱吉はうるうると瞳を潤ませて、がばっとテーブルに突っ伏してしまいました。
「ううう〜っ!そうなんですっ…オ、オレがヒバリさんにちゅーしちゃってから、遊びにきてくれなくなっちゃいました〜〜!」


ボンゴレのお屋敷にしょっちゅう遊びに来てくれていたウェアキャット(通称『ねこ』)の子供が姿を見せなくなってから、もう1週間が過ぎておりました。
なんとも愛らしく、それでいてこまっしゃくれた態度の『ねこ』は知らず知らず皆の癒しになっていたようで、一体どうしたんだろう? と心配する声もちらほら出始めています。

特に子供を大層可愛がっていた綱吉の落胆っぷりは半端ではありません。
「うぅっ、あの時ヒバリさんからも、ちゅーってしてもらっちゃったー!なんていって浮かれすぎた罰が当ったんだ…オレが悪いんだっ…うっうっうっ」

あまりの綱吉の嘆きっぷりに、獄寺はなんとか元気を出してもらおうと必死になりました。
「十代目、あんな野良『ねこ』のことは綺麗さっぱり忘れてしまいましょう! どこかで逞しく野良生活してますって!」
「うっうっ、ヒバリさんは野良さんじゃないもん…。ちゃんと飼い主さんがいるんだもん…。きっとこの近くに住んでて、みんなで楽しく暮らしてるんだもん…。」


子供可愛さに目がくらんだ綱吉が「ヒバリさんさえ良かったら、こっこのお屋敷で一緒にくらしませんかーっ!」とお願いしたことがあったのですが
「…つなよしがそんなにいっしょに暮らしてほしいなら、とうさまとかあさまに聞いてみてあげてもいいよ?」と言われてしまい、慌てて
「いえいえいえ!一緒に暮らしている方がいるなら、いいんですっ、今の話は忘れてください!」と叫んでしまったのです。


「あの時は、『ねこ』さんのこと良く知らならなかったから、野生の『ねこ』さん一家がこの近くに暮らしているのかと思ってたけど…。野生の『ねこ』さんって居ないんだよね? とうさまとかあさまっていうのが、多分飼い主さんだよね…。」
「そうっすね! 愛玩用の『ねこ』は、ほぼ全てが研究所生まれのはずですからね! 野生のがいたとしても、それは元々飼い『ねこ』だったのが、野生化したってだけですから。まぁ、飽きっぽい『ねこ』のことですから、きっと他にも可愛がってくれるお宅を見つけてそっちに通っているんですよ!!そんな薄情な『ねこ』のことなんか忘れて、ぱーっと気分転換に遊びに行きませんかっ!?」
「………獄寺くん、オレに仕事放り出して遊びに行って、リボーンに絞め殺されろっていうの?」
恨みがましげなジト目で睨まれて、獄寺は慌ててブンブンと首を振りました。
「いっいえ、決してそのような………申し訳ありませんでしたーっ!俺は右腕失格ですー!」



ページジャンプ用目次
★ 4P〜 綱くん、日本へ行く
★ 8P〜 雲雀邸で宴会
★12P〜 アラウディ、部屋に来る
★14P〜 綱くん、大岡越前状態になる
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ