小説

□『ねこ』じゃないもんっ! U (2日目・朝)
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『ねこ』じゃないもんっ! U (1日目)のつづき。






翌朝綱吉が起きると、隣の部屋からすごい寝癖の獄寺が目をしょぼしょぼさせながら姿を現しました。

「あ〜、十代目…おはよーございます…。昨日はすいません、自分酔っ払って正体無く寝ちまったみたいで。」
「あ、おはよう、獄寺くん。いいんだよ、たまには羽目を外さなくっちゃ。……ところで、山本は?」
綱吉は恐る恐る隣の部屋をちらりと見ました。

昨日、山本は隣の部屋にアラウディを寝かせると言っていましたが、未だ二人で寝ているのでしょうか。
しかし、それならそれで獄寺が大騒ぎしているような気も致します。

「あー、ヤツなら俺が起きたときにはもう居ませんでしたよ。ロードワークに行ったんじゃないっすかねー。」
「そ、そうなんだー。山本、身体が資本だもんね。」
綱吉は内心ほっとしながら笑顔を浮かべました。
山本は本職はスポーツの選手です。オフシーズンや手が空いているときだけボンゴレの仕事を請け負ってくれているのです。

その時ぱたぱたと軽い足音が響いて、子供が部屋に飛び込んできました。
「つなよしーっ!」
「きょーやさん、おはようございますっ。」
子供はぎゅっと綱吉の身体にしがみついて、くいっと顔を上に向けました。
「おはようのちゅー、してっ。」
「えっ、い…いいんですか?」
「うんっ。おやすみのちゅーは、ぼくからしたんだから、おはようのちゅーは、つなよしがして当然でしょ。」
んーっと口をちょっと尖らせて瞳を瞑る子供に、綱吉はメロメロのへにゃへにゃになりながら、ちゅっと音を立ててキスをしました。
「うん、いいね。おはよ、つなよし。」
「えへへ…嬉しいです、きょーやさん。」
子供は満足そうに頷くと、きゅっと綱吉の手を握りました。
「じゃ、また朝ごはんのときにね!」
そう言うとぱたぱた走っていってしまいました。

「ひゃあん! きょーやさん、わざわざ寄ってくれたんだ。嬉しいなぁ!」
綱吉は幸せ一杯の表情で、頬を染めてその後姿を見送りました。
「かーっ! 朝からオアツイことで!」
獄寺が顔をしかめながらその様子を後ろで眺めておりました。



2人が身支度を終えて廊下を歩いておりますと、ちょうど廊下を曲がったところで山本に鉢合わせしました。
「おはよー、ツナ。…ついでに獄寺。」
「うっせ! ついでは余計なんだよテメー。」
「おはよう、山本。どこ行ってたの?」
スウェットではなく、和服を羽織っている山本の姿に、ツナは首を傾げました。
「ん? ロードワークだけど。帰ってきたら草壁さんに朝風呂勧められてさ、ありがたく頂いたのな。着物は借り物だぜー。」
「そうなんだ。」
「うん。……ツナ、昨日はごめんなー。」
山本は頭を掻きながらそう言うと、すまなそうな顔をしました。
「えっ、…う、うん。………その、…えっと…。」
「あー。……朝、寝てる間に自室のほうに運んだのな。だからちょっと、その……俺もまだ会ってないっていうかさー。今から様子見に行こうとしてたとこ。」
「そっ、そう…。」
「うん…。あ、じゃ、ちょっと行って来るな。また後でな〜。」
昨日も通った吹き抜けのホールにたどり着くと、山本はそう言って二階への階段を上がっていきました。

「え? おい、ちょっとどこいくんだ? …なんっすかアイツ? 十代目、昨日何かあったんすか?」
「う、うん。ちょっとね…。」
どこまで言っていいものやら判断がつきかねた綱吉は、獄寺に向かって曖昧な笑みを浮かべました。
「まぁ朝食の後ででも、落ち着いてから話すよ。」
そう言って昨日の夕食会場だった部屋に入ろうとした綱吉でしたが、入り口の所で飛び上がりました。

そこには、暗雲をしょっておどろおどろしい笑みを浮かべた白蘭が仁王立ちして待ち構えていたのです。



ページジャンプ用目次
★ 4P〜 綱くん、朝ごはんをいただく
★ 7P〜 サロンで話し合い
★11P〜 アラウディ、唐猫茶を飲む
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