小説

□波乱万丈な綱吉くんの日々(2日目)
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AM 00:20


「それじゃ、おやすみなさい」
ラウさんの部屋の前でぺこりと頭を下げたんだけれど、彼はオレの左手にすがりつくようにぺとっとくっ付いて離れようとしない。
「あの〜〜?」
ラウさんは顔をしかめたまま、ちらちらとこちらを見るだけだ。
「あ、そういえば…」
オレはトイレの前の廊下に丸まっているひよこの毛布の存在を思い出して、引き返して取りに行った。
もちろんラウさんは相変わらずオレの左手にくっついたままなので、二人で団子状態でもごもご歩くことになった。

今度はラウさんの部屋のドアを開けて彼の背中を押してみたんだけれど、ラウさんは足をぐぐぐっと踏ん張ってイヤイヤと顔を横に振る。
何だかその仕草が、ケージに押し込められるのを嫌がっている猫さんにしか見えなくて、苦笑を漏らしてしまった。
「どうしたんですか?」って聞いたら、ぶすくれてしばらく押し黙った後「………だって、変な髪形のおばけが…」とぼそぼそ呟いた。

―――よっぽど草壁さんに後ろから声を掛けられたのが怖かったんだろうか。完全にトラウマになっちゃってる…。

オレは部屋に顔をつっこんで、安心させるように振り返った。
「大丈夫、何もいないですよ〜」
「…ホントに?」
ラウさんは疑わしそうな顔をして、オレの顔をじっと覗き込んでくる。
「はい。ベッドまで一緒に行きますから」
オレが率先して部屋に入ると、ラウさんも引き摺られるように一緒に入ってきた。

「あのね、僕…べつに怖いとか思ってるわけじゃないんだからね。ちょっと気になるだけなんだからね。ホントだよ?」
そうむきになって言い続けるラウさんをハイハイと宥めて、半ば無理やりベッドに押し込んで毛布を身体にかけてあげる。
彼はしばらく落ち着かない様子でもぞもぞしていたけれど、オレがゆっくり髪を撫でてあげると瞼がとろんと落ちかけてきた。

ラウさんの髪、ふわっふわですっごく柔らかくて、気持ちいいな…。
ほっぺたもすべすべだぁ。
そうやって顔や髪をそっと撫でていたら、ラウさんは意外とすうっと寝入ってしまった。

…ふぅ、良かったよ。なかなか寝付いてくれなかったらどうしようかと思った。
う〜ん、あどけない寝顔。…マイペースでお騒がせなところもあるけれど、眠っていると可愛いなぁ。

オレはそっと足音を忍ばせながら部屋を後にした。
さぁ、石像になった気持ちでヒバリさんのベッドにもどらなくちゃ!

2012/05/23
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