小説

□『ねこ』じゃないもんっ! U (2日目・夕)
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『ねこ』じゃないもんっ! U (2日目・昼)のつづき





「それで、一体全体今日は何故オレの家に来てるんです? しかもご兄弟を連れて。リボーンの差し金か何かですか?」
やっと一連の騒ぎがなんとか下火になった頃、綱吉は兄弟子のディーノに向かって質問しました。

雲雀親子は隣の部屋で奈々の特製ケーキをたくさん目の前に置いてもらってご機嫌な様子です。
おとなしくなっている今のうちに…と、綱吉はディーノの隣に座って話を始めたのでした。

「いや別にヴィートは連れてきたわけじゃなくて、偶然、たまたま日本に来てて〜なぁ?」
ディーノは隣に座っているヴィートに、そう声をかけました。
「そうそう、俺がマトリの仕事でこっちに用事があってさ、んで兄貴がたまたま日本に向かってるっていうからさ〜。」
「マトリ?」
聞き慣れない言葉に、綱吉は首を傾げました。
「あぁ、俺、国際捜査官麻薬Gメンなんで。麻薬取締り、略してマトリ。」
「えぇ〜〜〜! ヴィートさんって国際捜査官さんなんですかーっ!?」
「そうそう、だから誘拐事件はどっちかってーと俺の管轄じゃなかったんだけどね〜。マトリのほうの仇敵みたいになってるやつが関係してるらしいっていうから、潜入してたの。」
「へえっ、そうだったんですか。……国際捜査官?」
綱吉はあれっと首を傾げました。どこかで最近同じような台詞を聞いた気がします。

「あれ? アラウディさんも国際捜査官だって言ってたような…あの人は諜報部だったっけ?」
綱吉はぐるりと首をまわして獄寺に確認をしました。
「はい、そのとおりですねっ、十代目! 確かにアイツは国際諜報捜査官だと名乗ってましたよ。」
綱吉の脇に御腰のように控えていた獄寺が嬉しそうに返事をしました。

「アラウディ…? 国際諜報…?」
ヴィートはちょっと首を傾げていましたが、やがて「ああ!」と叫んでぽんと手を打ちました。
「ひょっとしてそいつって最近特殊課に配属された新人?」
「新人かどうか知りませんが、白蘭は結構最近だって言ってたような…」
「俺も実際会ったことは無いんだが、巷ですっげー話題になってたぜ。超美人の新人が入ったって。たしかそいつの名前がアラウディだったような…」

「あれ? アラウディって確か恭弥のいとこの名前だよな?」
ディーノが横から口を挟んできました。
「恭弥のいとこー? マジでかっ、うっわー特殊課の新人の顔、見に行っておけば良かったな! どうせ話ほどじゃないと思って見に行かなかったんだよなぁ。くうーっ、そりゃすっげー美人ちゃんに違いなかったのになぁ! 惜しいことをしたぜ。」
「恭弥のいとこだけあって、実に愛らしい『ねこ』らしいじゃないか。しかもお相手を探してるっていうから、早速名乗りを上げて明日見合いするんだぜ。」
幾分得意げなディーノに、綱吉はびっくりしました。
「えっ!? ディーノさんがアラウディさんの見合い相手? お見合いの相手ってジョットさんじゃなかったでしたっけ?」
「そうだぞ、俺は明日可愛いアラウディと見合いをして、そのままアラウディを攫って温泉旅行に出かける予定なんだぞっ!」
背後からジョットが勢い込んでそう言ってきました。
「見合い相手はなにも1人に決まってるわけじゃねーからな。『ねこ』と俺たちの集団お見合いだな! 『ねこ』がお気に召した一人だけが勝者になるわけだ。というわけで、ジョット、俺は勝つ気満々だからな。」
「何を言うかへなちょこのくせに。リボーンから聞いているぞ。お前は部下が居ないと何一つ満足にできないってな!」
「だからしっかりロマーリオ以下精鋭3人つれてやってきたぜ! 準備は万端ってやつよ。」

「ちょ…ちょっと、ディーノさんジョットさん…。こんなところで笑顔を顔に張り付かせたまま睨み合わないでくださいよっ! っていうかもう、何が何だか訳が分からなくなってきましたーっ!」
綱吉は髪をくしゃくしゃにかき回しながら叫びました。
ややこしすぎて頭の中は爆発寸前です。

「なー、恭弥。おまえのいとこの美人ちゃんに俺も会いたいな〜。どんな感じ? 恭弥と似てる? それとも全くちがう? そんなに魅力的な『ねこ』ちゃんなら、俺も見合い相手の一人として参加させてくれよ〜、なぁなぁ。」
ヴィートが隣の部屋で満足そうにケーキをぱくついている大人の雲雀に声をかけています。
「ちょっ…! ヴィートさん、雲雀さまを刺激するの止めてくださいよっ。せっかく貢物でおとなしくなってくれてるのに…!」

大人の雲雀はフォークで突き刺したケーキをお上品に口に運んだ後、すいっとナプキンで口元を拭って満足そうなため息をつきました。
「ふう。奈々のお手製ケーキは絶品だね。…で、何? 明日のお見合いに参加したい? まぁ、貴方あの子に結構気に入られていたみたいだし、少なくともそこのへなちょこ跳ね馬よりかはマシなんじゃない?」
「えっ…、俺、……気に入られた? …って、いつ?」
ヴィートが若干引きつったような表情をしました。
「ん? ついさっき、貴方この子と一緒に保護してくれてたって豪語してたじゃない。」
「お見合い相手って―――まさか、あの美人ちゃんのおちびちゃん!?」
ヴィートは素っ頓狂な叫び声を上げると、未だ言い争っているジョットとディーノのほうへちらちらと視線を投げました。

「兄貴にロリショタの趣味があったとは…あれ、でもあのちびっこさで俺の同僚ってのはかなりの無理が…。」
「『ねこ』の特殊能力で小さくなってただけだよ。」
あふぅ、と欠伸交じりに大人の雲雀が答えました。
「なんだそうなのか!? じゃあやっぱり本来は恭弥と同じように食べごろ美人ちゃんなのか?」
「まぁ僕よりは年下だけど、一応もうすぐ成『ねこ』だね。あとはパートナーを決めるだけだよ。」
「うっわー、いいねいいね。俺さっきあの美人ちゃんとちゅ〜一歩手前まで行ったんだぜ? うっわ惜しいな〜、あのときちゅ〜してたら婚約できてたかもなぁ!」
「馬鹿馬鹿しい、あんな小さい幼年期のときのキスなんてノーカウントだよ。」
大人の雲雀は意味深に綱吉のほうを向いてにいっと笑いました。

「ひーっ! 雲雀さま、オオオオレはきょーやさんとのこと、ちゃんと真剣にですねっ、考えてましてですねっ、だから無効とか言わないでくださいねっ?」
「この子は幼年期と成長期の狭間でね、くやしいことにもうノーカウントにできない微妙なお年頃なんだよね。」
大人の雲雀は自分の膝の上に座ってケーキを食べている子供の頭にぽんっと手を乗せると、わざとらしいため息をつきました。
「だから一刻も早く破談にしたいんだけどねぇ。きみがさっさとギブアップすれば手間が省けるのに、まだ頑張る気? 早くあきらめて慰謝料がっぽり払いなよ。」
「ひいいっ、もっとお役に立つように頑張りますから、そ、それだけはご勘弁を! 雲雀さまーっ!」



ページジャンプ用目次
★ 3P〜 アラウディ、目が覚める
★ 6P〜 白蘭、帰還
★ 9P〜 綱くんたち、お風呂に入る
★11P〜 小ヒバリ、遊びに来る
★15P〜 ちゅーしちゃった!
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