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□恋の行方(ロイ×エリザベス)
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カランッ…―と小気味の良い音を鳴らしながらドアが開いて、スーツに身を包んだ黒髪の男が店にあらわれた。






カウンターに構えていた恰幅のよい婦人は、見知った人物が店に入ってきたことに気づく。







「いらっしゃい。
おや…、ロイ坊じゃないか。」





ロイと呼ばれたその男は片手を少し上げて婦人に微笑むと、カウンター席に腰を下ろした。







「こんばんは、マダム。エリザベスは…いるかな?」






「あいにくだが…、エリザベスちゃんは今お務め中だよ。
ありゃしばらくはかかるね。新しいお客だから…。」





マダムの言葉を聞いたロイは顔をしかめると、ふぅとため息をついた。




「彼女の人気も困ったものだな…。毎回、やきもきさせられる…。」





「エリザベスちゃんはお客だけじゃなくて店の女の子たちにも大人気だからね。
本音を言うと…、正式にうちに来て欲しいくらいだよ。」






「いやいや…、いくらマダムの頼みでもそれはできないよ。
彼女は…、私の大切な部下だから。」






「大切な部下ねぇ…」





マダムはロイがエリザベスのことをそう言う度に、ロイ坊にとってのエリザベスちゃんはそれだけじゃないだろうに…と内心思うのだった。






「だったら、あんた、たまには誰か他の子にしてみたらどうだい?」





マダムはセイラムを口にくわえながら、悪戯っぽく言う。








「いや…、遠慮しておくよ。」





ロイはマダムの突然の提案に、手を左右に振りながら苦笑してみせた。












「私は…、昔も今も彼女一筋なんだ。」










ロイの黒い瞳は真っ直ぐで揺るぎのないものだった。








「そう言うだろうと思った…。あんたを試しただけだよ。
今日は、奥の部屋で待ってるといい。」






ロイはああと答えると、席を立ちあがる。









「ロイ坊…」




「何?」





「今言ったこと…、いつかエリザベスちゃん本人に直接言ってやんなよ。」








ロイは返事の代わりに肩をすくめて困ったように微笑むと、にぎやかな客席の奥にある通路に入って行った。


















「互いに好き合ってるといっても…なかなか上手くいかないものだねぇ」



マダムは唇にくわえたセイラムに火をつけると、ロイの後ろ姿を見ながらぽつりと呟いた。

そして、口からふぅっと青く細長い煙を吐き出す。

辺りにはメンソールの香りが漂った。






「全く…。もどかしいったらありゃしない…」


















恋の行方 は何処へ?





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