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□ 俺の冬の楽しみかた
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俺の冬の楽しみかた

 俺の中で一番好きな季節が
 やって来た。
 朝起きると窓ガラスが
 白く雲っている。
 パジャマのままリビングへ
 行くと冷たい空気が
 部屋全体に広がっていた。

 かちっ、とコンロに火を
 いれると、昨日の余った
 スープを温める。
 
 「まだ寝てんのかよ…」
 
 俺はしぶしぶ廊下に出た。
 


 「兄貴、朝だぞ」
 膨らんでいる布団をばしん、
 と軽くたたく。
 するとちょこん、と頭が出た。
 「あと、ごふん…」
 「そんな事言ってちゃんと
 起きた事ないだろ」
 「…」
 
 あ?また寝た?

 「あーにきー」
 そういいながら、士郎のベッドに
 上がった。
 
 がばっと布団を剥ぐと
 士郎がさむっ、と身を縮めた。
 耳元に口を近づけてわざと
 息をかけると
 士郎が飛び起きた。

 「おはよう、兄貴」
 「おは、は」

 耳を抑え、真っ赤だった。

 …可愛い。
 
 冬の士郎は寒がりなので、
 どんなに近づいてもあまり
 拒まれない
 (度がすぎると怒るが)

 でも俺の気持ちを知ったら


 きっと嫌われるだろう。


 だから冬が好き。
 寒い、と言って士郎に
 くっつける。

 士郎が鈍感のバカでよかった。



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