book2

□独占欲
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この手で、
君の瞳を隠して、君を導く綺麗なものも汚いものも全て見えないようにしたい。

この手で、
君の耳を塞いで、君を惑わす60兆の声を聞こえないようにしたい。

この手で、
君の鼻をつまんで、君を引き寄せる甘美な誘惑を辿れないようにしたい。

この手で、
君の口を覆って、君を誘う全てのものを吸い込まないようにしたい。そんなものは酸素だって許しはしない。

この手で、
君の指を絡めて、君を求めた何かに優しく触れないようにしたい。

この手で、
君の足を繋ぎ止めて、君が私のそばから離れてどこにも行ってしまわないようにしたい。

この手で、
君を抱き締めて、2秒の風すら君を撫でないようにしたい。

それでもこの手で、
君の心に触れることができない。

この手は。
君が誰かに導かれても、
君が誰かと話しても、
君が誰かに引き寄せられても、
君が誰かに誘われても、
君が誰かに優しくしても、
君が誰かとどこかに行っても、
君が誰かに撫でられても、

それでも小さくて無力だ。

だから今日も、この手を切り刻んで海へ沈めるのだ。


独占欲


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