book2
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君の冷たいそれを首もとに感じるのは、いったい何度めだろう。初めて感じたときのことだって、そう。覚えているよ。まあなにも、それだけじゃなくて、言葉や体温や、匂いや、指先だって、私は一ミリも忘れはしないのだけど。
懐かしいね、と笑う日が来ると、勝手に思っているよ。
まあでも今は。そうだね。君の視線は、うん。どうやったって、氷のようなんだろうね。氷が在り来たりなら、時計の針、それも時間を指してる針のようだとでも言っておこうかな。
あの時と今との違いなんて、時が経っているわけだから当たり前に存在するのだけれど。それでも。
今は、君のその瞳の奥に隠された、まるで時計台の中の秘密のような湖を、感じたの。
静かに静かに波打って、その上では星が瞬いて、一生昼にならない湖。その際に触れてしまえばきっと溢れるのでしょうね。
ああ。だから。何の話をしたかったかと言うと。
きっと今の気持ちを忘れる君に、エールを送りたかったんだ。
頑張ってね。好きだったよ。愛してたよ。
なんて、君を愛せなくなった私が言うには、残酷すぎるのかしらね。
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