book2

□花を抱いて眠る(7)
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7.サボテン



目の前にあの人がいる。

どうやら、これは幸せな夢らしい。目の前のあの人は笑っている。

いや、もはや夢か現実かは関係ないかもしれない。私にはもうどちらがどちらか区別がつかなくなっているのだから。

私はあの人に、誕生日プレゼントと一緒にサボテンを渡した。

「ありがとう。」

「いえ、喜んでもらえたなら良かったです。」

あの人はなにをもらっても嬉しいよなんて言った。

そんな風に。

なにをもらってもなんて言うけれど、サボテンの花言葉を知ってもそんな事を言えるのだろうか。

枯れない愛。

こんなとげとげの不恰好な植物なのに、こんな花言葉があるだなんてとは思った。

過酷な環境でも育つ強かさと、とげとげの武骨な姿と可憐な花の差からその花言葉がつけられたらしい。

ぴったりだと思いながら、でも、私には生きる強かさなんてないと考えもした。

「私は」

「あなたが生まれてきて、今まで生きてくださった事がなにより嬉しいです。」

あの人の瞳を見て言う。
それが虚像だとしても、私は伝えたかった。
これが夢だとしても、本当は伝わっていないとしても、なんとしても。
私はあの人に会えた事が嬉しい。

あの人に出会えた事が、こうして話している事が、話していた事が、今私が生きている意味の一つとなっている。

「私きっと、あなたが好きです。」

「…。」

「でもこれは恋愛じゃないです。あなたを、人間として好きです。こうして話して、笑顔を見ていると思うんです。ずっとこのままでいて欲しい。あなたをこれからも知っていきたい。あなたに知られていたい。でも、一番近くにいたいわけじゃない。そういうことなんだと思います。」

「そうか。」

「はい。」

あの人は決して答えない。
これが夢だとして、でも今日の夢は、私に嘘はつかないのだろう。

「私も、生きていてよかった。」

私はそう言葉にして、ゆっくり目を閉じた。
もうすぐ暗転する。
この先にあるのはまた夢だろうか、それとも現実だろうか。

あの人の返事は聞こえないまま。それはきっと、夢の外で聞きたいから。

おたんじょうびおめでとうございます。


Я Люблю тебя.



暗転


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