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□そんな15分。
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女が書く男の気持ちも、
男が書く女の気持ちも、
女が書く女の気持ちも、
男が書く男の気持ちも、
どこか、なんだか違う気がしていた。
女だからどうとか男だからどうとかという考えの上に立って言っているのではなく、ただ、性別のこだわりとか、女々しさとか、男のプライドとか、そういうそれらしさを表すものが自分は嫌いだった。
だからと言って自分から優れた言葉の旋律が生まれるわけでもないのだけれど。
だからこそ、あの人の紡いだ文章と言う形の芸術とも言える言葉の群れに魅了されたのだけれど。
それは、ひどく表し方がシンプルで、それでいて何か意味があるような、深みが見えない、海底の見えない海のような文章だった。そしてそれを書いた人は、どうしてかひどく人に好かれるのだ。常に笑顔に囲まれ、皆あの人に吸い込まれていく。
(私も、あの人のファンの一人なのだけれど。そして私は彼に嫉妬しているのだけれど。)
やっぱり、人を魅了する人と言うのは、決まっているのだろうか。
そう思った。そして、自分はそういう”魅了する側”ではないとも思った。芸能人や、芸術家や、自分より何か勝っている誰かを羨ましいと思った、あの時の感覚に似ている。
「(あれ、、、?でも、)」
自分もあの人も、芸能人も、芸術家も、どっかの誰かさんも、孤独に浸ってみたり、くだらないことをしてみたり、そういう人間らしいところはわざとらしいほどひどく共通していた。
「(考えすぎなのかもしれない。もしかしたら、その人らしいことや、その人のアイデンティティーや能力を理解した上での結果、と言うことなのかもしれない。)」
(無い物ねだり・・・か。)
そんなことを考えながら、自分はキーボードをたたいて自分のよくわからないままに言葉を紡ぐ。
ただ、その行為が無駄だとは思わないし、いつの間にかあの人への嫉妬は消えていたし、何だかお腹も空いてきた。そうして最後に思うのだ。ああ、私も人間であると。
そんな15分。
(今日のご飯は何だろう。)