book

□溺れてまばたきをする
1ページ/1ページ



依存。

━━━━そう言われてハッとした。保健の授業の、薬物についてやっているときだった。

「●○は★*&■@☆なので%→→↑してΧΧ依存してしまいます。」

「依存は◎◆で℃$が♂♀と同じように●※●です。依存▼□♭依存★∬≒依存。」

「依存はみんなをダメにしてしまいます。」

心臓の、ドクドクという心拍音が鼓膜に響いて、手に力が入らなくなって、頭のどこかがジーンとして、どうしようもなくどうしようもなくて、ぐらぐらとなにかが揺れる。心か、それとも身体か、あるいは世界か、もう何がなんだかわからない。ぐらぐらゆらゆらして倒れてしまいたくて、もういっそ僕を殺してくれと、そう願って泣きたくなった。だけれど、そうやって泣けるほど安定してなかった。全てすべてがあべこべでぐちゃぐちゃだから。この世界が蜃気楼のように私を惑わすから。いや、違う。私が勝手に酔っているだけだ。わかっていてもどうにもならないけれど、でもきっとそうだ。世界はちっとも変わらない。勝手に酔って勝手に変わっているのは私だけなんだ。ああもう嫌になってきた。何も考えたくない。ぶくぶくぶく。泡を吐いて、そして溺れていく。

「(どうしてこうなったんだろう。 すごく不安定だ。いつの間に私はこんなになったんだろう。昨日お父さんに怒られたのも、お母さんに泣かれたのも、先生に呆れられたのも、全部全部こんな僕のせいだ。わかってる。

でもどうしようもないんだ。何かに縋らずにはいられないんだ。貴方に、やっと触れることができたんだ。そして、離れた瞬間から私は渇きに向かって走り出した。よーいのドンで、1、2の、3だ。ピストルの音の代わりに聞こえたのは他の誰でもない、自分自身のまばたきのおとだった。)」



溺れてまばたきをする


(貴方に溺れはじめました。)




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ