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□水死体の私を貴方は愛すだろうか
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私は時々、どうしようもなく温もりを求める時がある。

━━━━寂しい。涙は出てこない。体に異常はない。

あぁ、手が震えているかもしれない。腕が腐ってボロボロと崩れる感覚がする。人形のように肩から腕が外れそうだ。目の焦点がぶれて未来が見えそうにないな。耳に入ってくるのはゴミ箱行きの雑音ばかりで。鼻が詰まって酸素が入らないからと口を開ければ入ってくるのは汚い空気。喉に残っている自分の手の温もりを抱き締めようと思ったのだ。鎖骨が砕けているような気がしてきて。お腹の中から虫に喰われていくビジョンが止まらない。足先から地面に溶けているのではないだろうか。

なんて。そんな妄想を一瞬で繰り返す日々の中で、私は、段々と蝕まれるように寂しさと人恋しさと悲しさとよくわからない不安に襲われる。急激にそういうものが来ると言う人もいるが、私の場合は違うらしい。と言うのも、きっと私が考えてしまうからなのだろう。考えて、巡って、思って、想って、そうしてきっと思考の海に沈んでいくのだ。だとしたらこれは、沈んでいく感覚なのだろう。そうしてやがて水圧に潰される自分を想像しながら、窒息して浮かんでいくのだ。

「会いたい。」

その一言を言えたら、どんなに楽なんだろう。彼は、一度私をあの海からかっさらってくれたのに。もう手を伸ばす勇気は私にはないのだ。






水死体の私を君は愛すだろうか



(愛しています。貴方が愛してくれなくても。)


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