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□貴方に贈る
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貴方が私よりも先に待ち合わせ場所に来ていた時、
貴方が私に優しくしたと時、
貴方が私の手を握ってくれた時、

貴方がふと私に「大好き」と言った時、

その度先を越されたと思う。悔しいだとか負けただとかの感情もあるけれど、それよりも嬉しいのと寂しいのが心の中を占めて、私はあいまいに笑うのだ。その自分でもわからない感情押し潰されそうになって私は貴方を求めた。

「(いつもいつも、私は求めるばかりで我儘で、そんな自分を嫌いになってしまっていたのに。…いや、今だって私は自分が嫌いだけれども。━━━━━でも今は、そんな事よりも…)」

貴方の事が好きだと、私の心が貴方に伝われば良いと、そう思ってやまないのだ。

「私の方が、大好きだもん。」

そう言ってハッとなる。そんな事を言えるほど私はまだ貴方を知らないと言うのに。貴方がそこまで考えているかはわからないけれど、でも、意地と照れ隠しとを裏に隠した言の葉が降る所を見つめながら私は後悔した。元々私は比べ事が嫌いだけれども、「大好き」なんてそんなに幸せそうに言われたら、嬉しすぎて胸が苦しくなって、でも恥ずかしくて、いつまでもその言葉に慣れる事ができなくて、そう言うしかなかったのだ。

「(━━━━今度からは、素直に気持ちを言えるように、ただ幸せを分かち合えるように、笑えるように、しよう。そうして貴方をもっともっと知って、貴方から貰った気持ちと幸せを返せれば良いな。)」

ただ会えない日を寂しがらずに、貴方を好きな気持ちをたくさんたくさん集めて会えたときに貴方に渡せるように。私の笑顔を好きだと言ってくれる貴方が幸せなように、貴方が笑ってくれるように。


貴方に贈る


(いつも貴方を想っています。…なんて恥ずかしくて言えないけれど。)









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