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□濡れた心
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雨、雨だ。しとしとという音が、ぽつぽつという音が、窓の外を濡らしていっているのだと教えてくれている。雨は、屋根の下にいる私の心も濡らすようで、心は、傘もささずに雨と散歩だ。いつだってそれは、勝手に私から離れていって。そうして勝手に側にいるよと私の涙を拭うのだ。

「勝手だ。」
(知ってるよ。)
「嫌いだ。」
(知ってるよ。)
「怖くないの?」


どうやら私であるはずの私の心は、嫌いと言われても平気なようで。私のくせに。生意気だ。私の心は、私がいなきゃここにあるはずないのに。雨と散歩することも、日だまりと微笑む事もできないのに。でも同時に私も、心がいなくちゃ私になれないんだ。

(どうせ離れられない。一生一緒だよ、私たちは。)

(どう?嫌いと意地をはるのがくだらなくなってきたでしょ?)

(死ぬまで一緒だよ。)

そんな安っぽいメロドラマの台詞を吐いて、私の心は、私を抱き締めたのだ。

「そんなんで落ちるほど安くないことも知ってるでしょ?」

(知ってるよ。)

それでも、雨の日も悪くないかなって思うぐらいには、その温もりに安心した私がいた。




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