book

□遺書
1ページ/1ページ

ごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんねごめんね

君にごめんね
彼にごめんね
親にごめんね
友達ごめんね
世間ごめんね

ごめんね

ごめんね

ごめんね

私は彼を殺しました。

憎かったのです、あの笑顔が、あの髪が、あの甘い声が、あの白い首筋が、あの紅い唇が、あの指先が、嫌いでした。大嫌いでした。それがどこのなにともわからないXXに、穴と脂肪のかたまりに、触れるのを想像しては私の頭の中は絡まったコードのような汚い汚い私の拗れた螺旋階段のような道端の踏み潰されたゴミのような、そんな情景でしか表せないような風になるのです。だから、だから私は決めたんです。あの日、彼に会いに行こうと。最初は彼の中身に触れたいなんて思いませんでした。そう、すべては彼が悪いんです。彼が悪かったんです。だって彼ったら服を着た豚と楽しそうに手を繋いでしかもキスをしたんですもの。

「あれ?」

そう、そして思いました。

その豚が、私より不細工で私よりダミ声で私より馬鹿で私よりデブで私より、彼に似合わない豚が、彼とお揃いの指輪をつけた豚が、今以上に腹を膨らませて彼にそっくりの子を抱いて彼の隣で幸せそうに笑っているのを想像しました。
ああ、豚の名前ですか?さあ?どうでもいいような名前でしたね、ははは。

だから私、彼が死ぬしかないと思ったんです。彼がこれ以上誰かと螺旋を紡ぐことがないように死んでほしかったんです。(豚は触れたくもありませんでした。だって知ってます?豚っていろんな菌を持ってるんですよ?)

そして私彼を刺してしまいました。彼は痛みに歪む顔も綺麗で、本当憎くて涙も出たほどでした。胸が苦しくて吐き気や動悸もしました。そうそう、彼、最後に私の顔に触れたんです。そうして微笑みました。そうしたら私が助けるとでも思ったんですかね。私はもう君のものなのに、触れるなんて本当どうかしてますよね。あ、言っておきますが浮気ではありませんよ?私は君一筋ですから。

でもごめんなさい、私は罪を犯しました。ですからあと一ヶ月で私が君の妻になる所だったことは、どうかなかったことにしてください。君に迷惑はかけたくないんです。君は納得しないでしょうね。納得しないで悩んで泣いて辛い思いをするでしょうね。ごめんね。

来世ではきっと君の妻になるから許してね。

ではまた来世で。

君の可愛い可愛い彼女より




[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ