一途の流れ星

□閉じた殻
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この試合でも、あたしは園香や恵美たちを無視したプレーをした。けど、大館さんの長身を活かしたプレーに思うように動けず、何度かボールを奪われてしまう。その度に、あたしがC組のメンバーを無意識のうちに引きつけていたせいか、相手のマークを逃れた結や恵美がボールを奪い返して攻めなおす、ということが続いた。

それでも確実に点を奪っていき、僅差ではあるものの試合をリードしていった。それに調子をよくしたあたしは、大館さんからボールを奪った瞬間にシュートを決めてみせた。

……それが彼女の苛立ちに火をつけることになるなんて、考えもせずに。

ドリブルをしながらゴールへと向かうあたしの行く手を、大館さんが塞いだ。それを上手いことターンでかわしてやろうとした瞬間だった。

「――っ!」

大館さんの足があたしの足を引っ掛けてきた。そのために盛大に転んでしまって、あたしは痛みに呻いた。審判が慌ててホイッスルを鳴らし、あたしのもとに駆けてきた。そして自力で立ち上がれないあたしを見て、引っ掛けられた右足を診た。

「……強く捻ったのかもしれない。保健室に行って処置してもらってきてください」

下された判断に、あたしは素直に頷いた。

ひどく痛い。このまま試合なんて続けられなかった。

「だ、大丈夫?」

立ち上がることが難しいあたしに、一紗が躊躇しながらも手を貸してくれた。あたしは痛みで何も言葉を返せず、そのまま体育館の入り口まで肩を借りていた。

「……ここまででいいから」
「え? でも、大丈夫――」
「いいから! さっさと試合に戻りなって」

あたしの心配をしてくれる一紗を、乱暴に振り払った。まったく歩けないほど痛めた感じじゃない。それに、壁を伝えばある程度楽に移動できる。一紗の手助けがなくても平気なことは本当だ。

でも、それ以上に、関わってほしくないという気持ちが強かった。戸惑う一紗をその場に残し、あたしはのろのろと保健室まで歩いて行った。
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