滅曇士

□一夜目
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20XX年。人類は衰退の道を辿っていた。

すべての始まりは、突然謎の生命体が姿を現したことだ。彼らは想像の世界でしか見たことのないような容姿を持ち、そして凶暴で、破壊を好んだ。どこから現れたのか、誰もわからない。そんな彼らに、人々は恐怖に陥れられた。

彼らは人を食い、建物を破壊した。それに対し軍の兵器を持って反撃を試みるものの、彼らは隙を見つけるとそれらを破壊し、そして進化を遂げ続けた。

いつしか地上で安息に暮らすことすらできなくなった人々は、隠れるように姿を消していった。

しかし、地上でしか得られない資源が豊富であるため、人々はやむなく、時折地上へ姿を現した。それは巣穴から出てきたねずみと変わらず、天敵らはそうして現れた人を容赦なく狩った。

「はぁ、はぁ……」

そしてまた一人。天敵から逃げ惑う十代前半の少年がいた。彼の後ろには何者もいない。

しかし、必死で逃げ惑う彼の影は、より巨大な何かで埋もれていた。

その天敵は翼を持っていた。鋭い口ばしと爪を持ち、目がないにも関わらず的確に少年に狙いを定めてその巨体で追い続けている。息が上がり、少年の足が重くなってもまだ、鳥は悠々で飛翔を続けている。

「うわぁああ!」

そして突如、少年の身体は宙へと持ち上げられてしまった。鳥は器用に彼をつかみ上げ、徐々に高度を上げていく。少年は脱出しようともがくも、遠くなっていく地上を目にしたせいか、徐々に抵抗を諦め始めていた。

そんな少年と鳥、二つの影をじっと見つめる者がいた。

そこは、彼らから少し離れたところにあるビルの屋上。くるみ色のボブの髪を風に揺らし、ところどころ裂けたままのセーラー服からは、幾多の傷跡や包帯が垣間見えている。荒れ果てた地上には不釣り合いな鮮やかな赤色をしたスカーフは、リボンの形をして胸元で揺れていた。

そんな女子高生らしい格好をしているその人物の手には、普通の女子高生には似つかわしくない物が握られていた。

鈍い輝きを放つ一本の日本刀。

その刃に劣らない鋭い瞳を向けられていることに、彼らはまだ気付いていない。彼女はそれを知ってか知らずか、彼らが向かう進行方向へ駆け出した。隣接する屋上を渡りながら、鳥との距離を測る。そして鳥の頭が彼女に追い付こうとした時、彼女は躊躇することなく屋上から飛び降りた。

次の瞬間、高く振り上げられた彼女の日本刀を、赤く燃え盛る炎が包みこんだ。

「はぁっ!」

彼女はそのまま、炎の刃を振り下ろした。刃は鳥の首を斬り、断末魔の叫びを響かせた。
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