一途の流れ星
□はじまり
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来栖志信。この白川高校で知り合った、あたしと亮の友達。髪の色と同じ、透けるような茶色いフレームのメガネをかけているのが特徴。こいつはあたしと同じB組。だから亮はこの教室にいたわけだ。
「おはようございます、浅野さん」
「おはようございます、来栖さん。亮、座るからそこどいて」
一年生の時から変わらない、厭味ったらしいにやりとした笑みと共に交わされる視線と視線をぶつけて火花を散らすような挨拶。それがあたしと来栖のいつも通り。もちろん、亮みたいに普通の会話もするけど。
その亮を席から立たせ、スクールバックを机の上に置いた。進級するにつれ、かばんの中身は重くなっていく。五キロはあるんじゃないかと思うかばんは、ドンって音を立てて机の上に鎮座した。
「あっ! なあ、浅野。化学の教科書持ってきてない?」
かばんの中の教科書たちを机の中に移動させようとした時、亮が思い出したようにあたしに尋ねてきた。あたしは手を止め、亮の目を睨みつけた。
「あるけど……もしかして、忘れたの?」
「三時間目なんだ。な? 頼む」
「やだよ。亮は忘れ物しすぎ」
「そんなこと言うなよ。ね? 麻美ちゃん」
「ちゃん付けするな! 気持ち悪い!」
予感的中。
亮は両手を顔の前で合わせて頼んでいるけど、顔はどこか笑っている。その態度がちょっとだけ気に入らなくて、あたしはそっぽを向いて突き放した。
その次の瞬間、亮は呼びなれないあたしの名前をちゃん付け呼んで、あたしはそれに悪寒がした。きっと、亮はあたしの機嫌を取りたくて、でも心のどこかではふざけてそんなことを言ったんだろう。