一途の流れ星

□噂
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桜が散る頃、あたしの学校生活は一気に忙しくなる。一年のうちのピークが、すでに訪れたみたいに。

ジリジリと鳴り響く目覚まし時計を止め、それが鳴るまでに着終えていた制服の乱れをチェックする。そして鏡に向かって短い髪の毛を梳かし、ブラシを机の上に乱雑に置いて部屋を出た。

「おはよう」

リビングに出れば、まだ朝五時半だというのに、お母さんが台所に立って挨拶をしてくれた。

「おはよう。お母さん」

あたしも挨拶をして、食卓の席についた。そこにはすでにお弁当と朝食が並べられていて、こんがり焼けたパンとハムエッグの美味しそうな匂いが漂っていた。

「お母さん、ありがとう。いただきます」
「はい。毎年大変ね、こんな朝早くから」

お母さんは笑って言うけれど、あたしからすれば、そんなあたしに付き合わされて早起きをしているお母さんの方が大変な気がする。

「好きでやってることだもん。それより、あたし、もう高校生だし、朝ごはんくらい自分で用意するよ。あと、お弁当も」
「いいのよ。どうせ、侑美のお弁当の準備もしなくちゃなんだし」

あたしがそう言えば、お母さんはそう言ってまた笑う。いつもそんな風だから、あたしもついつい甘えてしまうんだ。

「ごちそうさま。じゃあ、いってきます」

朝食を終えると、食器を下げてから、あたしは家を出た。

まだ六時前。朝の空気は少しひんやりして寒いくらい。体を温める代わりに、少し駆け足で学校に向かった。
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