一途の流れ星
□噂
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校門をくぐり抜け、向かうのは校舎ではなく隣のテニスコート。そこにはすでに二十人ほどのテニス部員が集まっていて、ジャージ姿で練習をしていた。
もうすぐ一年のうちで最初の大会がある。高体連。それに向けての朝練だった。
あたしもすぐ近くにある更衣室でジャージに着替え、ラケットを片手にコートに入った。
朝練はほとんど自主練だった。サービスの練習をしている人もいれば、二人で組んでネットプレーの練習をしている人もいる。あたしはエンドラインに立ち、そこでサービスの練習を始めた。
ボールを高く、真っすぐ放り投げ、それを高い位置で、ラケットの中心で確実にとらえる。それを思った通りの場所に走らせるのは少し難しくて、ちょっとした重心のずれなどが影響してくる。
速く。
鋭く。
正確に。
プロじゃない、ただの高校生であるあたしにできる技量など、たかが知れている。それでも、強い相手と戦いぬくのに、サービスは先手必勝の武器だ。
――少しでも上達したい。悔しい思いをする試合を減らすためにも。
そう思いながら真剣になってボールを打ち込むあたしの姿は、気付かないうちに仲間の心に火をつけるらしい。少し遊び気分を交えながら練習していた人たちは、その気持ちを封じ込めた姿勢に変わっていった。もともと実力の高い人たちは更に上を目指すように、またがむしゃらになった。