一途の流れ星

□蝕むもの
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「浅野先輩、頑張ってー!」
「麻美、踏ん張りどころだぞ!」

高体連。女子硬式テニスシングルス決勝戦。要っちや浩介たちに見守られながら、あたしはコートに立っていた。

二日に渡って行われるこの大会。男子シングルスは藤川先輩の優勝、男子ダブルスは高井くん、浩介ペアが決勝トーナメントまで進んだものの、八位入賞で終わってしまった。女子ダブルスは、三年生の三澄優先輩と一年生の寺島もえペアが十六位入賞で終わった。残る試合は、女子シングルス決勝。今、あたしが戦っているこの試合だけだ。

――負けない。絶対勝つんだ!

強い気持ちを込めて、跳ね跳んできた黄色いボールを打ち返した。それはエンドラインとシングルサイドラインの交差点ぎりぎりの場所へと走り、相手は追いつけずにボールを逃した。

「ゲームセット、アンドマッチウォンバイ浅野!」

その瞬間、審判の声が会場に響いた。それは試合終了と、あたしの勝利を告げるものだった。

「……勝った?」
「やったぁ! 浅野先輩の優勝だ!」
「よっしゃあ!」
「浅野、よくやった!」

一年生の時は、決勝トーナメントに上がるだけで精一杯だった。そんなあたしが優勝した。その事実にあたし自身が驚いて、実感がわくよりも先に仲間達の歓声が飛び交った。

汗を軽く拭い、対戦相手と簡単に礼をかわしてから、ようやく勝利したという事実を受け入れられた。会場を出ると、待ち構えていた仲間達に次々と抱きしめられて――あたしの顔には満開の笑顔があった。
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