一途の流れ星
□蝕むもの
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その日の夜――次の日の朝になっても、その興奮は止まなかった。
「おはようございます、浅野さん」
「おはよう、来栖」
上機嫌で登校すれば、いつもの調子で来栖が話しかけてきた。でも、あたしはいつも通りとは違う接し方で返した。そのことに、彼はわずかに調子を狂わされたようだ。
「何だよ。随分ご機嫌だな」
「まあね」
あたしは言いながら自分の席についた。
「おはよう、麻美。高体連、お疲れ様」
「千里、おはよう」
それと同時に後ろから千里の声がして、あたしは振り返って笑顔を向けた。
その瞬間、あたしは何か違和感を覚えた。いつもなら、意地悪いきらきら笑顔で挨拶が来るはずだった。だけど、今の彼女の声にそれは感じられず、張りも無いように思う。
「千里、どうかした? 元気ないよ?」
「え? そう? 何でもないよ」
「何でもない、って声じゃないじゃん。本当にどうしたのさ?」
それくらいの変化がわからないほど、あたし達のつき合いは短くない。それは来栖も同じらしく、じっと彼女を見つめて動かなかった。
「あー、わかった。降参するわ。だから次の休み時間まで待って? 先生も来たことだし、ね?」
一分ほどの沈黙の後、千里は苦笑を浮かべて言った。両手を顔の横まで持ち上げて困ったように言いつつも、少し元気を取り戻したようだった。あたしと来栖は、その様子に少し安心した。
けど、千里が打ち明けた内容は、黙っていられないものだった。