一途の流れ星

□罠
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いや、それは難しい。あたしも明日香や要っちたち一年生と部活で仲は良いけど、それ以外のプライベートについてはまだよくわかっていない。来栖みたいに一年も付き合いがあれば嫌でもわかってくることはあるけど、さすがに一ヶ月は短すぎる。

ということは、この一件はもともとの人間関係によって起きたものじゃなくて、何らかの環境の変化によって起きたもの、ということだろうか? だとすれば、犯人は意外と身近にいる人物なんじゃないだろうか?

ここにきて、初めて具体的な犯人像が見えた気がした。

「まぁ、これである程度犯人像はできたんじゃないの?」

あたしの心境を察したのか、侑美はあたしの顔を覗くように見つめて言った。あたしは頷き、笑みを浮かべて答えた。

「うん。ありがとう、侑美」
「別にいいよ。それに、ゆみもりょーちゃんとは小さい頃に仲良くしてもらったし。ついでにもう一つ、まーちゃんに協力してあげる」
「えっ?」

小さい頃から変わらずにあたしを「まーちゃん」と呼ぶその口元は、にやりと歪んでいた。幼さが残る黒真珠のような瞳には、なんともいえない愉快さがにじみ出ていた。

侑美がその顔をする時は、大抵何かを企んだ時だ。良くも悪くも、あたしはその顔になった侑美に舌を巻いたものだ。気がつけば、緊張でごくりとのどを鳴らし、侑美の話に耳を傾けていた。
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