一途の流れ星

□糸口
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だから罠≠仕掛けるにはちょうどよかったのだ。

机の中に収まっていた物を一度机の上へと移動させ、その最奥にある物を取り出した。あたしのお気に入りのレモンイエローカラーのケータイ。ディスプレイをこちらに向ければ、ムービー撮影中の画面が姿を見せる。それを操作してデータに保存したところで、犯人がやって来たであろう時間帯の映像を探し当てた。

犯人がどのような行動をとるかなんて、エスパーでもない限りわかるはずがない。だからあれから毎日、教科書の影にケータイを忍ばせ、様子を窺っていたのだ。

机の中という狭い視野。犯人を捜し出すだけの決定的な特徴が映るかどうかは、賭けに等しかった。何もわからなかった場合、次の犯行が行われるまで、今度は別の場所にケータイを仕掛ける必要があるかもしれない。でも、それは自分の机の中で行うよりも難しい。それを設置していることがバレれば、きっと犯人は現れなくなる。

成功確率は低いかもしれない。でも、あたしは侑美の考えたこの策を選んだ。だから、何かひとつでもわかれば……そう願いながら画面を眺めた。

やがて、ガタッと物音がし、画面の中で椅子が動かされた。机に対し斜めに引かれたそれとの隙間に何かが入り込み、画面に映る色が変わった。制服のスカート特有の折り目が見え、机の中に忍び込んでくる色白の手が見えた。
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