一途の流れ星

□雫の愛
2ページ/8ページ

向かうのは、できるだけ亮のいるA組の教室から離れたところにある空き教室だ。

ちょうど一階上の奥にある教室が空いていた。あそこはホームルーム用の教室と違って、選択授業の際に使う教室だ。どこかの部が部室として使っていることもないし、さっき確認してきたけど、自習をしている生徒もいなかった。話をするにはぴったりなはず。

そこに着くと、あたしは教室の戸を締め切り、門倉さんと完全に二人きりになった。

「それで浅野さん。話って何?」

ふわりと茶色の髪を揺らし、くるりと振り向いた門倉さん。その表情は穏やかで、警戒している様子はない。

「別にたいしたことじゃないの。ただ、亮のこと、どんなふうに思ってくれているのか、聞いてみたくなって」

あたしはそう言って、そばにある机の上にひょいと腰かけて彼女を見た。いたずらに警戒させて、事実を聞けなくなってしまったら元も子もない。だから本題からそれない程度の話題を出してみた。

「そういう浅野さんは? 亮のこと、どう思ってるの?」
「亮? 幼馴染。悪友。腐れ縁。それ以上でもそれ以下でもないよ」
「ふーん。じゃあ、私も。亮は大切で大好きな彼氏。それ以上でもそれ以下でもないわ」

にこっ、と笑って答える彼女は、純粋に亮のことだけを思ってくれているようだった。

けど、何故かこの時、あたしは妙な不気味さを感じた。気のせいだろうか。この笑顔が、なんだか仮面か何かのように思えてしまうのだ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ