一途の流れ星

□叶った願い
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白川祭一週間前、亮たちのバンドは劇的に上達した。それはこれまで抜けていたドラムが加わったからでなく、増川さんによる指導によるものだった。

バンドのメンバーに加わった初日、ずっと亮たちのセッションを聞いていた彼女は、次の日には完璧なスティックさばきを見せてくれたのだ。それも、素人でもわかる圧倒的なレベルで。千里もこのことには随分驚いていた。

聞けば、増川さんのお兄さんが通う大学のバンドで普段からドラムを叩いているらしく、周囲の上手な人たちに感化されて腕をあげていたらしい。そして、普段彼女が活動しているバンドは過激な楽曲が多いのか、いつも大人しい増川さんからは想像できないほどの激しく、熱いドラムの音が響いていた。あまりのギャップに、その場にいた全員が思わず固まってしまったくらいだ。

そこで、曲作りの指導権は急きょ、千里から実践経験豊富な増川さんへと移された。すると、彼女は激しいスティックさばきとは真逆の、普段のおどおどした態度ではあったものの、的確に曲作りを進め、即席の高校生バンドとは思えないほどのレベルまで上り詰めていったのだ。
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