一途の流れ星
□冷たい視線
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長くて暑い夏休みが明けた。
長期休み明けは、あたしが特に苦手としている時期。だって、休みボケで頭は勉強にむかいにくくなっているし、残暑はまだ厳しいし、夏休み後半は部活もなかったから体は鈍っている。調子を取り戻すまでに苦労する期間なのだ。
だけどそれと同時に、久々に友達と学校で会えるのが楽しみであったりもする。こちらへの思いを胸に、二年B組の教室に入った。
「おはよう」
あたしの後ろの席に座る千里は、いつものようにすでにいた。机の上にかばんを置きながら声をかける。そして何日かぶりに「おはよう」と声が返ってくる――はずだった。
千里はあたしを視界に一瞬だけいれ、すぐに逸らしてしまった。不機嫌そうな表情で、一言も話そうとしない。
――いくら機嫌が悪いからって、久々に会ってその態度はないでしょ?
そう思ったあたしは、少し頬を膨らまして千里にもう一度向き合った。
「千里! 何、朝からむくれてんの?」
「……くも……よくも、そんな顔でいられるわね?」
あたしの言葉に返ってきたのは、とてつもない怒りを含んだ千里の双眸だった。しかも、その怒りは明らかにあたしに特定して向けられている。
でも、その怒りの原因にあたしは心当たりがない。あたしからすれば、それは千里の八つ当たりのように思えた。
「何? あたし、何かした?」
だから、迂闊にも挑発するような口調でそう言ってしまったんだ。途端に千里の顔は紅潮していき、その怒りは彼女の机にぶつけられて、バン、と大きな音が鳴った。