一途の流れ星

□冷たい視線
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「『何かした?』……ですって!? ふざけんじゃないわよ! あんだけ散々人のこと馬鹿にしておいて!」
「はっ?」

机から身を乗り出して大声を上げる千里の言葉に、まるで心当たりがない。何かの間違いじゃないの? そう言おうとした瞬間だった。

「おい、浅野」
「まさかと思うけど、オレらに言ったことまでとぼける気じゃねえよな?」

これまたあたしに対するイラつきを隠さずにやってきたのは、保田と柴田の二人だ。二人とも中学校時代から知っていて、それなりに仲もいい。けど、この二人にも何かひどいことをしでかした記憶はない。

「とぼけるも何も、あんた達に何かした覚えはないんだけど?」

素直に言えば、保田の顔が更に険しくなった。それに少し怯むものの、記憶にないことには何もしようがない。威嚇をするように睨みつければ、隣で千里が舌を打った。

「……最低。麻美がこんな奴だなんて思わなかった」
「だから、あたしが何をしたって?」

千里の苛立ちは、すっかりあたしにも移っていた。荒い口調で三人を睨みつけると、柴田があたしの片腕を強く引っ張り上げてきた。その勢いで上半身が椅子から少し浮く。

「忘れたんなら言ってやろうか? 『弱小エース。てめえのサッカーセンスは敗北を招くだけのクズだ』!」

腕を思い切り握りしめる手が痛い。その痛みで僅かに顔が歪む。けど、その痛みを忘れるような衝撃があたしを襲った。
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