一途の流れ星

□閉じた殻
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十人の人間が息つく間もなく走り回り、一個のボールを巡って争いが起きる。あたしもその中の一人になり、標的になっているものを手に走り、そしてゴールへと放った。綺麗な弧を描いてシュートが決まれば、ホイッスルの高い音が耳に入る。

十二対零。それが今の試合の現状。相手は三年生だけど、あたしの敵じゃない。くすぶり続ける苛立ちを力に変え、敵も味方も寄せ付けずに、またシュートを決めた。

「ちょっと! 少しはチームプレーとか考えてよ!」

その直後、園香があたしを睨みつけながら近寄って来た。あたしの名前を呼ぶこともなく、髪を伝う汗を拭いながら文句をぶつけてくる。その行為が、氷のように冷えきったあたしの心をさらに冷たくするというのに。

「チームプレー? そんなの、いつ練習したっけ? だいたい、勝ってるのに何が不満なわけ?」

園香をキッと睨みつけながらそれだけ言って、あたしは背を向けた。たったそれだけのやり取りで、園香はビクッと身体を強張らせ、何も言わなくなってしまった。

きっと、今のあたしは心だけじゃなく、目つきや口調、身にまとう雰囲気まで、何もかもがひどく冷たいんだろうな。……それを緩和する気は全くないけど。

そして試合は再開され、あたしはまたボール目がけて飛び出した。それを手にしていた相手の三年生はキッとあたしを睨みつけ、ドリブルしながらかわそうとしている。

でも、あたしはそんな彼女を嘲笑うようにあっさりとボールをかすめ取り、スリーポイントラインからシュートを決めてみせた。そして相手がなんとか逆転を狙おうとしている間に、試合は終了した。

三年生相手に圧勝したことに、応援していたクラスメイト達から歓声が上がった。

けど、あたしに対してかけられる好意的な言葉はひとつもない。あんな独りよがりなプレーを見ていたら当然かもしれない。

そして、あたしもそんなものを望んでいなかった。
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