一途の流れ星

□麻美の過去
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男達と一緒に車に乗った二人の女。そのうち、助手席に乗った奴は門倉に似ていた。そしてもう一人。もしかしたら気絶させられていたのかもしれないその人物の顔が目に入った時は、驚いて思わず二度見てしまった。

そして車が走り出した瞬間には、俺はすでに部屋を飛び出していた。急ぎ足で向かう先は、中村たちがいる部屋だ。力任せに部屋の戸を叩けば、迷惑そうな顔をした中村が姿を出した。

「来栖くん? 一体何の用?」
「浅野はいるか?」
「……いないわよ」
「本当か?」
「今さら麻美に近付くなんて、どういうつもり? あんた、私に絶交されるのが面倒で、あの子のことシカトすることにしたんじゃなかったわけ?」
「それどころじゃねぇんだよ!」

浅野の名前を出しただけで、中村は更に機嫌を悪くした。向けられる鋭い睨みを振り払って荒い声を出せば、部屋の奥から征木が顔を覗かせた。

「来栖くん。麻美ちゃん、どうかしたの? わたしたち、お風呂行く時に麻美ちゃんに留守番をお願いしたんだけど、戻ってきたらいなくて……」

征木の声は不安げで、何が起きたのか気になっているようだった。

「そっか。征木、サンキュ」

でも、説明している状況じゃない。俺はそれだけ言うと、部屋を去った。そして廊下を急ぎ足で歩きながら、ケータイを取り出した。
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