一途の流れ星

□新しい日常
2ページ/5ページ

「麻美、おはよう!」
「ぐふっ!」

さらに加わる千里の明るい声。修学旅行の事件がきっかけで仲直りしてからは、以前よりもスキンシップが過激になった気がする。今だって、後ろから急に飛びついて来て、おかげで変な声が出ちゃったし……っていうか首絞まってる! 絞まってるよ!!

「千里、苦しい!」
「あっ。ごめんごめん」

必死の訴えに気づいて首に回していた腕を放してくれたものの、その顔は笑っていた。

「ねぇ、麻美。数学の課題わかんないの。手伝って? っていうかむしろ写させて?」
「嫌。それくらい自分でやってよ」
「そんなこと言わないでぇ! タピオカレモン好きなんでしょ? 奢ってあげるから」
「……亮? 千里に教えた?」

あたしを物で釣ろうとする千里に対するイラつきは、瞬間的に亮へと方向転換した。

すると、あたしの殺気を感じ取ったのか、亮は逃げるように教室から出て行った。

――まずいと思うなら最初から教えるなよ。

亮に対して今さらどうしようもないことを心の中でぼやいていると、原口先生が教室に入ってきた。それを見た千里は、あたしに恨めしそうな目線を送りながら席に戻って行った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ