一途の流れ星

□エピローグ
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頻繁に連絡を取り合っているわけじゃないけど、都合がつく時は、たまにこうして会う約束をしている。友達の延長という形で始まった交際だからか、あまり深い付き合いはなく、今までと大きな変わりは特になかった。

だけど、恋人ごっこをしていた時と違って、亮はふとした時に頭を撫でたり、そっと手に触れようとしたり、龍介先輩と付き合っていた時のようなスキンシップを取りたがるようになった。もしかすると、曲がりなりにも恋人という関係になったことで、何かしら気持ちに変化があったのかもしれない。

そして、それはあたしも同じらしい。以前のあたしなら、亮にそんなことをされようものならきっと気味悪がって騒いだり喚いたりしたはず。だけど、今は全然そういう気にならなかった。今のあたしは、龍介先輩や志信に抱かなかった新しい感情を、亮に抱いていることを自覚していた。

「なぁ、カラオケ何時間歌う? ……浅野?」
「麻美」
「は?」
「『浅野』じゃなくて、『麻美』」

だから一歩前進したくて、あの日の志信と同じ言葉を使って、亮にそう呼ばせようと思った。

「なんだよ、いきなり」
「いいから」
「ま、麻美……」

亮は照れくさそうに、でもしっかりとあたしの望んだ呼び方をしてくれた。それは予想していたよりもずっと嬉しい出来事で、気づいた時にはあたしは立ち止まって――亮にキスをしていた。
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