ミドリンより!

□『そんな、顔?』
1ページ/1ページ






「真太郎はどうした。」





そう言ったのは、【キセキの世代】の主将である“赤司征十郎”だ。





「すまない、赤司」
「どうした、真太郎?」





長身で真太郎と呼ばれた彼、
キセキの世代のNo.1シューターである”緑間真太郎“。





「今日のラッキーアイテムを控え室に忘れてきてしまったのだよ。」
「はっ、ざまぁ。
緑間のくせに最後にブザービーターなんか決めるから忘れんだよ!」





キセキの世代エース“青峰大輝“





「そうっスよ、俺にパスくれなかった罰っスよきっと!」





キセキの世代進化する天才“黄瀬涼太“





「ふざけるな、今日のラッキーアイテムだぞ!
それにその前の言葉はなんなのだよ!
いつまで根にもつきだ!」
「ミドチンのアホー。」





キセキの世代でセンター“紫原敦“





「紫原ぁ…」

「はぁ、仕方がない。
早く行ってこい、俺たちは先に行っているからな。」
「あぁ、分かったのだよ。」





散々仲間に言われたあと、足早に緑間は控え室へと引き返した。























____________
_________
_____





「(案外広いのだよ)」





緑間は体育館の広さを改めて実感していた。

きっと赤司を長く待たせれば練習メニューを倍にされるに違いないと思いラッキーアイテムを手に、また歩く速度を速めようとした。

しかし、緑間の足は止まった。

ある一点を見たまま。

この体育館は東京でも指折りの広さをもっており、この時期は多くの大会が行われる。





「(何かの選手か?)」





緑間の視線の先に居たのは、体育館を一望できる2階の廊下にある窓を見つめる少女だった。





「(なぜこんなところに…)」





頭の片隅でそんなことを思いながらじっと彼女を見ていた。
そして無意識のうちに緑間はその少女に声をかけていたいた。





「何をしているのだよ。」

『っ、』





いきなり声をかけられてビクリと肩がはね、恐る恐る振り返る。





『あ、さっきの、』
「どこかで会ったか?」





緑間に彼女と会った記憶はない。





『試合出てましたよね?バスケの。』
「あぁ、見ていたのか。」
『はい、凄かったです最後のシュート。』





【凄かったです】と言われたとき、緑間はドキリとした。
いつも、“天才だから“で済まされてしまう彼にとってはあまりになれない言葉だった。





「人事を尽くしているからな。」
『でも、最後のシュートってコートの真ん中からでしたよね?
結構距離ありません?』
「俺はフォームを崩さない限りシュートを外すことはない。
まぁシュート範囲はハーフコートだがな。」





ここではっとした。
自分は初対面相手に何を言っているんだと、





「ところで、何かの選手なのか?」





先ほどからの自分の行動に気恥ずかしくなり、話をそらした。





『ちょっと前まで、バレエやっていたんですけど…』
「怪我か、」





緑間は立て掛けてある松葉杖に目をやった。





『はい、だからこれを機に辞めようかなと。』





どこか悲しそうな目を体育館に向けた。
 




「やめてしまうのか?」
『え、』

「俺にはとてもそんな顔には見えないんだがな。」

『そんな、顔?』
「怪我くらいで諦めるような、諦めの良さそうな顔には見えん、ということなのだよ。」

『っ!』





今日の自分は本当にどうしたんだ、と緑間は思った。
見ず知らずのどこの生徒かも分からない彼女に、自分のシュートを語ったり、放っておけばいいものを引きとめたり。
内心、自分に驚いていた。

一方の、彼女も驚いていた。
初対面の相手に見透かされるなんてと…
本当はやめたくない、そう思っていることを。





『私そんな風に見えます?』
「俺が勝手に思っただけだ、」

『そうですか、私の事“引き留めてくれて“ありがとうございます。』

「礼を言われるような事はしてないのだよ。」





彼女の言葉に少し引っかかったものの、時間をちらりと見ると少し話し過ぎたか、と緑間は思った。





「俺はそろそろまずいので戻るとする。」
『あっ、あの。』

「なんだ。」





今度は彼女に引き留められた。
明らかに焦ったような声で、





『…その本、まだ読みますか?』





本?と疑問に思ったが、すぐにわかった。





「いや、読むも何も今日のおは朝のラッキーアイテムだから当分使わないのだよ。」





その本というのは、緑間のラッキーアイテムである洋書だった。





『あの、良かったら貸していただけませんか?』
「いや、やるのだよ。
読まない者に所持されるより、読む者に所持された方がいいだろう。」
『え、でも悪いんじゃ…』

「構わない、持って行け。」





そう、素っ気なく言い彼女に洋書を渡した。





『それじゃあ、今度なにかお礼します。』
「いや、気を使うな。」

『私が納得いきません。』





緑間は少し以外だった。
大人しそうに見えていた彼女はかなりの強情だということに。





「はー、分かったのだよ」





緑間はため息を吐きながら携帯をジャージのポケットから出した。





『えっ、』
「早く、出すのだよ。」
『あ、はい、』





そう言うと彼女も携帯を出した。





「俺はまだ部活がある。
だからオフの日があれば連絡する。」
『はい、』

「じゃあまた。」

『あのっ!』
「なんだ、」

『本、ありがとうございます。』





彼女は嬉しそうに微笑みながら言った。





「っ、あぁ」





その瞬間、緑間は気付いた。

彼女に“恋“をしたのだ、と。





(真太郎、筋トレ2倍だ。)
(ハハハッ、ざまぁ!)
(どんまいッス、緑間っちww)
(大輝と涼太も2倍だ。)
((はぁっ!!!))
(名前をきくのを忘れたのだよ…)
 
 
 
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ