ミドリンより!
□『そんな、顔?』
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「真太郎はどうした。」
そう言ったのは、【キセキの世代】の主将である“赤司征十郎”だ。
「すまない、赤司」
「どうした、真太郎?」
長身で真太郎と呼ばれた彼、
キセキの世代のNo.1シューターである”緑間真太郎“。
「今日のラッキーアイテムを控え室に忘れてきてしまったのだよ。」
「はっ、ざまぁ。
緑間のくせに最後にブザービーターなんか決めるから忘れんだよ!」
キセキの世代エース“青峰大輝“
「そうっスよ、俺にパスくれなかった罰っスよきっと!」
キセキの世代進化する天才“黄瀬涼太“
「ふざけるな、今日のラッキーアイテムだぞ!
それにその前の言葉はなんなのだよ!
いつまで根にもつきだ!」
「ミドチンのアホー。」
キセキの世代でセンター“紫原敦“
「紫原ぁ…」
「はぁ、仕方がない。
早く行ってこい、俺たちは先に行っているからな。」
「あぁ、分かったのだよ。」
散々仲間に言われたあと、足早に緑間は控え室へと引き返した。
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「(案外広いのだよ)」
緑間は体育館の広さを改めて実感していた。
きっと赤司を長く待たせれば練習メニューを倍にされるに違いないと思いラッキーアイテムを手に、また歩く速度を速めようとした。
しかし、緑間の足は止まった。
ある一点を見たまま。
この体育館は東京でも指折りの広さをもっており、この時期は多くの大会が行われる。
「(何かの選手か?)」
緑間の視線の先に居たのは、体育館を一望できる2階の廊下にある窓を見つめる少女だった。
「(なぜこんなところに…)」
頭の片隅でそんなことを思いながらじっと彼女を見ていた。
そして無意識のうちに緑間はその少女に声をかけていたいた。
「何をしているのだよ。」
『っ、』
いきなり声をかけられてビクリと肩がはね、恐る恐る振り返る。
『あ、さっきの、』
「どこかで会ったか?」
緑間に彼女と会った記憶はない。
『試合出てましたよね?バスケの。』
「あぁ、見ていたのか。」
『はい、凄かったです最後のシュート。』
【凄かったです】と言われたとき、緑間はドキリとした。
いつも、“天才だから“で済まされてしまう彼にとってはあまりになれない言葉だった。
「人事を尽くしているからな。」
『でも、最後のシュートってコートの真ん中からでしたよね?
結構距離ありません?』
「俺はフォームを崩さない限りシュートを外すことはない。
まぁシュート範囲はハーフコートだがな。」
ここではっとした。
自分は初対面相手に何を言っているんだと、
「ところで、何かの選手なのか?」
先ほどからの自分の行動に気恥ずかしくなり、話をそらした。
『ちょっと前まで、バレエやっていたんですけど…』
「怪我か、」
緑間は立て掛けてある松葉杖に目をやった。
『はい、だからこれを機に辞めようかなと。』
どこか悲しそうな目を体育館に向けた。
「やめてしまうのか?」
『え、』
「俺にはとてもそんな顔には見えないんだがな。」
『そんな、顔?』
「怪我くらいで諦めるような、諦めの良さそうな顔には見えん、ということなのだよ。」
『っ!』
今日の自分は本当にどうしたんだ、と緑間は思った。
見ず知らずのどこの生徒かも分からない彼女に、自分のシュートを語ったり、放っておけばいいものを引きとめたり。
内心、自分に驚いていた。
一方の、彼女も驚いていた。
初対面の相手に見透かされるなんてと…
本当はやめたくない、そう思っていることを。
『私そんな風に見えます?』
「俺が勝手に思っただけだ、」
『そうですか、私の事“引き留めてくれて“ありがとうございます。』
「礼を言われるような事はしてないのだよ。」
彼女の言葉に少し引っかかったものの、時間をちらりと見ると少し話し過ぎたか、と緑間は思った。
「俺はそろそろまずいので戻るとする。」
『あっ、あの。』
「なんだ。」
今度は彼女に引き留められた。
明らかに焦ったような声で、
『…その本、まだ読みますか?』
本?と疑問に思ったが、すぐにわかった。
「いや、読むも何も今日のおは朝のラッキーアイテムだから当分使わないのだよ。」
その本というのは、緑間のラッキーアイテムである洋書だった。
『あの、良かったら貸していただけませんか?』
「いや、やるのだよ。
読まない者に所持されるより、読む者に所持された方がいいだろう。」
『え、でも悪いんじゃ…』
「構わない、持って行け。」
そう、素っ気なく言い彼女に洋書を渡した。
『それじゃあ、今度なにかお礼します。』
「いや、気を使うな。」
『私が納得いきません。』
緑間は少し以外だった。
大人しそうに見えていた彼女はかなりの強情だということに。
「はー、分かったのだよ」
緑間はため息を吐きながら携帯をジャージのポケットから出した。
『えっ、』
「早く、出すのだよ。」
『あ、はい、』
そう言うと彼女も携帯を出した。
「俺はまだ部活がある。
だからオフの日があれば連絡する。」
『はい、』
「じゃあまた。」
『あのっ!』
「なんだ、」
『本、ありがとうございます。』
彼女は嬉しそうに微笑みながら言った。
「っ、あぁ」
その瞬間、緑間は気付いた。
彼女に“恋“をしたのだ、と。
(真太郎、筋トレ2倍だ。)
(ハハハッ、ざまぁ!)
(どんまいッス、緑間っちww)
(大輝と涼太も2倍だ。)
((はぁっ!!!))
(名前をきくのを忘れたのだよ…)