ミドリンより!

□『じゃあ、ちーちゃん?』
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4月、入学式。





「それでは、新入生代表"龍皇寺夏桜"。」
『はい。』





秀徳高校。
東京都不動の三大王者の内の一校であり"東の王者"と呼ばれているバスケの強豪校である。

そして先ほど名前を呼ばれた彼女、龍皇寺夏桜は静かに壇上へ上がる。
その姿は凛としていた。





『穏やかな春の陽気の中、私たち286名は本日より秀徳高校の一員になれることを心より嬉しく思います。そして在校生…』

「(龍皇寺夏桜、ねぇ…)」

「「苗字イカツ…」」

「はっ、」
「え」





ぼそりと呟いた声が重なった。
お互い驚いて勢いよく隣を見て何故か噴き出してしまった。





「あー笑った。
俺高尾和成(たかおかずなり)よろしく。」
「ほんと。
あたし園原千奈津(そのはらちなつ)。
こちらこそよろしく。」





ひとしきり笑ったあと、とりあえず落ち着きを取り戻した二人は軽く挨拶をかわした。





「つかさ、あの子名前のわりに可愛くね?」
「そうだな、確か同じクラスじゃなかったっけか?」

「え!マジ!?」
「マジマジ。」





そんな他愛もない話をしている内に、長ったらしい入学式は終わっていた。

先生の声で新入生はぞろぞろと体育館を後にし各教室へと向いはじめた。





「はぁーー、疲れたぁ。」
「あーゆーのって、肩こるわぁ。」





先ほどの入学式で意気投合した二人は廊下を歩いていた。





「そういえば、園原って何部入るか決めた?」
「あたしか?あたしは陸上部だ。」
「へー、俺女バスとかかと思ってたわ。」
「バスケはなぁ…好きだけどしんどい。」

「しんどいって、陸上部もいっしょだろ?」
「そういう高尾は何部に入るんだよ。」
「んー、俺か?俺はな「うわ、あいつデカッ!」んっ?」





いきなり廊下がどよめきだした。





「どうしたんだ?」
「はは、マジか…」

「高尾?」





高尾がひきつったような笑いをしたことを不信に思い彼の目線の先を背伸びしてみた。





「え、」





彼女は目を疑った。
彼の目線の先にいた生徒は緑色の髪と驚くほどの背の高さだったからだ。





「え、高尾あれヤバくない?」
「ヤバいのは身長だけじゃねーよ。」

「どういう意味?」

「あいつさ、バスケ界でめっちゃ有名人なわけだ。」
「そんな有名なのか?」

「そ、“キセキの世代“っつってな、10年に一人のバスケの天才が5人同時にいた世代の事をそー呼ぶんだよ。であいつはその内の一人。」

「キセキの、世代…」
「んでもって、あいつは帝光中学って言うバスケの強豪校のスタメンにいた奴なわけよ。」





高尾ははじめてみるキセキの世代に圧倒されていた。
身長は兎も角としてその放たれている雰囲気は高校生とは思えぬ程貫禄があった。





「ま、とりあえず教室行くか!」
「え、いいのか?」
「何が?」
「いや、話掛けたりとか…」
「あー、いーいー。
どうせ部活でまた会うだろうし。」

「そうか。」





さっきの真面目そうな彼から、またいつもの調子に戻った彼と共に教室へ向かった。




























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__________
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「えー、今日からこのクラスの担任になった我妻一樹(わがつまかずき)だ宜しく。生徒からはワガツマンって呼ばれてるが好きに呼んでくれ。
今年で28。先生歴は5年だ。
好きなことは愛猫と遊ぶこと。じゃあ自己紹介と逝くか!」

「せんせー、逝くの字違いますよー。」
「しかもテンション高いし。」
「先生独身ですよね。」

「決定すんな!シバくぞ!」

「先生彼女…いないか。」
「うわ、俺このクラスやだ。」
「あ、先生時間ヤバいぜ。
自己紹介は!」

「おっと、一つ忘れてた。
俺は自己紹介中にワガツマクエッションを出すからな。」
「ネーミングセンスなっ!」
「じゃあ1番の天宮からなー。」





と、まぁダラダラな先生だが馴染みやすい。

時々彼の質問が入りつつも自己紹介は着々と進んでいった。





「じゃあ次、園原ー。」

「はーい。えーと、神ヶ丘中から来ました園原千奈津です。
好きな事は走ることで嫌いな事は勉強です。
部活は陸上部な予定以上。よろしく。」
「はーいじゃあ、ワガツマンクエッシヨン!
園原、お前は一体何人の女を落とした!!」

「ふっ、ざっと100人ってとこかな?」

「きゃーーー!!千奈津様ぁ!!」
「抱いてぇ!!」
「マジでか。」





何故か我妻は絶望していた。





「せんせーどんまい!!」
「おーし、じゃあ気ぃ取り直して、次高尾」

「はいはーい。
中央中から来た高尾和成でっす!
好きな事つか、趣味はトレーディングカード集める事で、特技はバク転っす!」

「よーし、高尾はウザイっと」
「はっ!?先生ヒッド!」
「そーだよな!野郎共!」

「「「「おぉう!」」」」





何故かクラスの男子を敵にまわした高尾。





「あーあ、可哀想に」





一方先ほど自己紹介を終えた彼女は他人ごとのようにその場を楽しんでいた。

ふと、隣を見るとまたしてもバチリと目が合った。謂わばデジャヴというやつだ。





「あーっと、龍皇寺さんだっけ?」
『はい、えっと園原さんでしたよね?』

「名前でいーよ。あたしも名前で呼ぶから。」
『じゃあ、千奈津ちゃん?』
「うーん、なんか肩っ苦しいなぁ。」
『じゃあ、ちーちゃん?』

「…」

『あ、ちーちゃんてダメかな?』





コテッと首をかしげ困った様に笑いながらきいてきた。
その時園原は思考が停止していた。





「(え、あ、えぇ!!
何あの小動物!!やっば、可愛い!!)」
「おーい、園原ぁ。」
「なななな、何だよ高尾!!!」
「目ぇ、めっちゃ血走ってるぜ。」

『あの、園原さん?』

「あ、悪い!
いいよそれで!むしろ大歓迎!!!」
『ホント?じゃあこれからちーちゃんってよぶね。』

「わかった。じゃああt「うーいじゃあ次龍皇寺」」
『ごめんね、前行ってくるね。』





そう言うと、静かに席を立ち上がり入学式の時と同じように凛としていた。





『はじめまして。日之原中からきました龍皇寺夏桜です。
えっと、趣味はバレエで特技は速読です。一年間よろしくお願いします。』
「おー、じゃあ龍皇寺は部活とか何やる?弁論とかか?」
『あ、まだ、決めてなくて…』
「そっかぁー、まぁ何かしら入れよー。青春の為にな!」

『はい、』





熱く語った我妻に呆れてか、彼女は困ったように笑った。

その笑顔を見たクラス全員は癒されていた事は本人は知らない。

近くして自己紹介タイムは終わった。





「うっし、今日はこれで終わりだ。後は帰るなり部活見学いくなりしやがれ。号令ー。」





今日一日かなりグダグダに過ごし終わりを告げた。





「夏桜はどーする?」
『うーん、部活見学行こうかな?』
「そっか、あたしも行くよ。」

『ちーちゃんは何部にするの?』
「あたしは陸上部。中学からやってたし。」
『そっか。』

「夏桜は…ぁ、決まってないんだっけ?」

『うん、まだ。』





ガラッ!!!





「龍皇寺夏桜はいる!?」
『え、あっ!』
「要件は後よ、来なさい!」

『あ、また明日ねちーちゃん!』

「あ、あぁ!」





いきなり教室のドアが開かれたと思ったら、黒髪を揺らし白衣を纏った保健医かとおもわれる女性が現れたと思うと、夏桜
を掴み教室を出ていった。





「なんだったんだ。」

 
 
 

(おー、騒がしいなどした?)
(あ、高尾夏桜が誘拐された)
(はっ、誘拐!?)
(うん、白衣着た人に)
(マジか…)

 
 
 
  
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