ミドリンより!

□『言って…ません。』
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「で園原。」
「お、高尾どうした?」
「いや、その白衣着た人って誰。」

「さぁ…」

「えぇ!知らんのかい!?」
「保健医…らしき人」
「らしき人って何だ?」
「まぁ大丈夫だと思うけど…」

「うーんまぁ、せんせーかもな。
そっか、っとじゃあ俺はそろそろ見学いくわ。」
「おーいてら。また明日。」
「おう、」





































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―――――――





「で、なぜ連絡をよこさなっかたのかしら夏桜?」
『え、いやごめんなさい。』
「まったく、」





ペシッ





『いてっ』
「連絡くらいしなさい。」
『麗夕(まゆ)さん…』





つい先刻ほど前、教室にやって来たこの女性は丘咲麗夕(おかざきまゆ)。

秀徳高校の保健医の助手だ。
ここの保健医は歳がいっているらしく、合宿や修学旅行等々に付き添いできないため彼女がその代わりをはたしている。





『でも麗夕さんが秀徳にいるなんてビックリです。』
「それはこっちの台詞よ。
いきなりクラブにはこなくなるし…」
『すいません…』

「まぁいいわ。今回は許してあげる。」





ぱちっと効果音がつきそうなほど綺麗なウインク付きでそう言った。





『なにも、きかないんですか?』
「きいても話してくれないでしょ?」
『ぅ…』

「まっ、話してもらわなくても大体わかるわ。
私と"同じ道"通ったんでしょ?」
『!!』
「けどあなたは耐えた。
違う?」

『でも、でも私は一度でも"やめたい"って思ったんです!』

「でも辞めなかったじゃない。」
『それは、周りの人達のおかげで、』
「でもその周りの人はやめるなって言ったのかしら?」

『っ!』





(本当にそれでいいの?)

(簡単に諦めんじゃねぇー、ダアホ!)

(辞め”たい”なんて勿”体”ない!キタコレ!)

(俺はまだ見ていたかったな。)

(諦めのよさそうな顔には見えん、)





『言って…ません。』
「そうでしょ?」
『はい。』

「それに、まだ捨ててないんでしょ?シューズ。」
『はい、やっぱりそれも捨てようと思ったんですけどダメでした。』
「本心じゃないっていい証拠よ。」

『私は…もう一度やってもいいんですかね、バレエ』

「当たり前じゃない。
あなたがそれを望むのならね。」
『もう一度、やりたいです!』
「ふふっ、上等。
じゃあ早速だけど…」
『はっ?』

「挨拶にいってきなさい。」

















『(…)』





現在彼女は体育館の端の扉の近くに居る。
遡ること5分前…















『挨拶って?』

「挨拶は挨拶よ。
体育館の一部を使わせてもらうんだから。
バスケ部監督の中谷先生と主将の大坪君にね。」
『え、でも知らn「行けばわかるわ」はい。』















『(挨拶って、確かに体育館使うけどスペースなんて…)』





そう、何度も言うが秀徳は東京都不動の三大王者である。
体育館のほとんどをバスケ部が占領している訳であり勿論第二体育館なんてものも存在しない。





『(麗夕さん〜〜!!)』





うふっと黒い笑を浮かべている彼女が目に浮かぶ。
取り敢えずどうにかして誰かに声を掛けなければと思い取り敢えず深呼吸をしてよしっ、と気合を入れて掛け声やスキール音のする中をのぞいた。





『あ、』





しかし、出かかった言葉は消えてしまった。
あまりに綺麗なシュートに…

高く放たれたボールはブレもせずゴールに吸い込まれるかのように入った。





「いやー、やっぱスゲーな真ちゃん!」
「やはりキセキの世代は伊達じゃないな。」
「マジムカつくから轢いていい?」

「やめとけ、宮地。」





どうやら今、新入生の腕試しがてらに1on1をしていた様だ。




「その変な渾名で呼ぶな。」
「えー、可愛いじゃん"真ちゃん"て。」
「黙るのだよ、貴様!」
「ちょ、貴様ってww」
「この、「あれ?龍皇寺ちゃん?」」





ガヤガヤとしていた体育館が一斉に静かになったと同時に視線が一気に彼女へと集まった。





『え、』





いきなり名前を呼ばれた事で我に返ったので返事が一拍遅れてしまった。





『あ、えと』
「何かうちの部活に用か?」
『私、1年の龍皇寺夏桜と言います。
その中谷先生と主将の大坪さんはいらっしゃいますか?』
「残念ながら監督はいないがキャプテンなら俺だ。」





名乗り出た彼はいかにも主将らしい威厳を持った風格の生徒だった。





『あ、部活中にすいません。
ここの一部を使わせていただくので挨拶を…』





控えめにきけば予想していた反応と言葉が返ってきた。





「はっ?体育館使うって場所ねーぞ?」
「あぁ、」





困惑した表情で言う金髪で長身な生徒と、少し厳つい顔をした生徒。すると、





「お前たちには話していなかったが、確かに体育館の一部を彼女が使う事になっている。」
「いやだから場所…」
「場所ならあるだろ?あそこが。」





主将の大坪が指差した方向を見た途端絶句した。





『え、そこは…』
「ステージだ。」
『(嘘でしょ、)』





(しーんちゃん、)
(だから貴様、さっきか)
(ずーっと龍皇寺ちゃんの事見てるけど、)
(関係ないのだよ。)
(もしや一目惚れ!?)
(黙れ!)
 
 
 
 
 
 

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