ミドリンより!

□『ホントだよ。』
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「あー、ねむ。」





気だるそうにボヤいきながら、桜並木道を歩く園原。
現在の時刻は7時半。





「おーっす!」





そんな彼女とは真逆のテンションでやってきたのは高尾だった。





「はよ、てかテンションたかっ」
「だって俺高尾だし?」
「朝練はないの?」
「無視かよ。
まぁ、さすがにまだねーわ。」
「確かに、仮入部期間だしね。」





くあっ、と大きな欠伸をして眠そうに目を擦る。





「ほらー、頑張れ園原ぁ!」
「あ、ワガツマン。」





後ろから激励が飛んできたかと思ったら、我クラスの担任であるワガツマンこと我妻だった。





「おはよう!
なんだ、入学そうそうイチャラブしてんのか!?」

「違うから、
おし、走るぞ高尾!」
「はっ!?
朝からダッシュかよ!」
「朝だからダッシュだ!」
「つかいきなり!?」

「覚醒した☆」





素晴らしい笑顔で振り向く園原を見てあはーっと乾いた笑みを浮かべる高尾。



3分くらい走って教室まで着いた。
当初の目的は担任から逃げる、という感じだったが走っている途中から、競争の様な形になっていた。





「はー、朝からロードワークなみ走るとかマジないわ…」
「高尾、意外と、早いんだな…」
「いや、俺一様バスケ部だから。
つかそういう園原は息切れすぎじゃね?」





高尾の言う通り園原は肩を上下させるほど息を乱していた。





「あたしは、短距離派なんです!」





弁解してもまだからかう高尾の脇腹を殴り教室に入った。





『おはよう、ちーちゃん。』
「おはよー。」





クラスメイトはまだあまり揃っておらず数名しかいなかった。
その中で意外にも夏桜が居たことに驚く園原と高尾。





「おっす、でもって昨日ぶり龍皇寺ちゃん。」
『あ、おはよう。
高尾君。』
「え!名前覚えててくれたの!?」
『得意なんだ、名前とか顔覚えるの。』

「そっか。
てゆーか、昨日はマジ感動したぜ!
俺あんまりそういう類のって興味ないんだけど、あれはなんていうか見ずにはいられなかったわ。」

『ありがとう。
そういえば高尾君はバスケ部って言ってたもんね。』

「何?なんの話!」





高尾と夏桜が楽しそうに話しているのに、いてもたってもいられず首を突っ込む園原。





「内緒だよなー龍皇寺ちゃん。」
「お前は黙ってろ!」

『昨日はちょっと色々あったんだよ。』
「ふーん。
つか、高尾!その“龍皇寺ちゃん“てなんかヤラしい。」

「は!?ヤラしいってなんだよ!」

「いやぁ、なんかねぇ。」

「だってよ、他になんて呼べばいいんだよ!」





高尾はいかにも考えています。とでも言うように腕を組んで首をかしげていた。





『私はなんでも大丈夫だよ?』
「あたしは夏桜って呼んでっけど、流石に高尾が名前呼びしたらあれだし…」
「かと言って、苗字は長いだろ。」





確かに、名前で呼ぶのは少々親しすぎるし、かと言って苗字で、龍皇寺と呼ぶのも大変だ。





「あ、」
「思いついた?」





はっ、といきなり顔をあげた高尾に期待の眼差しを向ける、園原と夏桜。





「“オウジ“ってのはどうだっ!?」





凄いドヤ顔で行ったものの、園原は期待の眼差しから一転、哀れみの目を向けていた。





「高尾…」

「なんだ…まさかっ、俺のネーミングセンスに感激しt「馬鹿か。逆に落胆したわ。」はっ?」

「いや、うんまぁ確かに夏桜はオウジって苗字にあるけど…

お前は夏桜を見てオウジに見えたか?!」

「見えん!」

「威張るな!
うーん、まぁ夏桜はどう思う?」





彼女を見て王子様に見えますか?と、尋ねれば100人中100人がNoと答えるだろう。





『私は良いよ。
中学の時もそうだったし。』
「え、マジ!?」
「ほらみろ、俺のセンスは間違ってなかったぜ!」





とりあえず、夏桜の愛称が“オウジ“に決まった所でボチボチと生徒が登校し始めてきた。





「ところでさぁ、オウジって来るの早くねーか?」





朝練?っと聞く高尾に





『さすが朝練はまだかな。
自主練ってところ。』
「エラいなー、夏桜はぁ」





園原は、グリグリと夏桜の頭を撫で回す。





『そんな事ないよ。
中学の時も毎朝あったから、癖でつい…』

「あー、そう言えば俺もまだ中学ん時の感覚で来ちまったわ。
俺いつも朝こんくらいだったしなぁ…」

「あたしもだな。
なんかまだ中学抜けてないなー。」





思い返せば、自主練のある夏桜はさて置き、朝練のない高尾や、園原がこの時間に来るのは早すぎる。

高校生活が始まり数日たっても中学の生活習慣は抜けないようだ。





「ま、折角早く来たんだし夏桜ー、今日当たるから答え合わせしよー。」

「あ、俺も!」

『いいよ、合ってる保証はないけど。』
「いや、オウジは合ってるに決まってるじゃねぇか!
学年首位だし。」
「確かに…凄いよなー。」

『凄くないよ、私科学とか物理は苦手だし、』





どうやら、学年首位の夏桜にも弱点はあるゆようだった。





「苦手っつっても余裕で平均いってんじゃんか!」





嫌味か、と園原がペシッと夏桜の腕を“軽く“叩いたつもりだった。





『っ!』

「え、あごめん痛かった!?」
「うわー、園原怪力ぃ。」





最低ー、とでも言うように園原に言う。





『あ、違うよ、ビックリしただけだから。』
「ホント?」
『ホントだよ。』





心配そうに尋ねてくる園原に、大丈夫と笑いながら伝えれば、安心したようによかったー、と笑った。





「おい、二人の世界に入んなよー!俺は空気か!」





しびれを切らしたのか、会話に入り込んだできた高尾。





「女子の世界に入りたいのかよ、高尾ww」
『ちーちゃんww』





園原の冗談がツボに入ったのか、夏桜は多少罪悪感を感じながら笑っていた。





「園原ぁ!」
「うわ、夏桜ヘルプ!」
「オウジ盾にするとかズルいぞ!」





高尾が、掴みかかる前に夏桜の後ろに隠れた。





『高尾君、女の子イジメちゃダメだよ。』
「オウジヤメて!真顔で言わないで!」
「やーい、ザ・マ・アww」
「っの〜!」





ギャイギャイと騒いでいると、結局何もしないまま、HRが終わってしまった。

そんな、3人の仲が深まった一日でもあった。





(おはよー、オウジ!)
(あ、おはよう吉原くん。)
(渾名広がるの早くね?)
(確かに…)
 
 
 
 
 

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