ミドリンより!

□『ありがとう、』
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入学からはや2週間。
時間が経つのは早いもので、仮入部期間も終わった。





『あ、高尾君おはよー。』
「ウーッス、」





いつものテンションの高い高尾はおらず、燃え尽きたような淀んだオーラを放ちながら教室に入ってきた。





「どうしたんだ高尾?」
『朝練で疲れたんじゃないかな…』





そんな高尾を心配したのか、園原がこっそりと夏桜に尋ねた。

秀徳高校は東京都の東の王者である。練習メニューは過酷すぎるほど、過酷だった。





「おーい大丈夫か、高尾?」
「大丈夫じゃねーよ。
あー、マジキツい…」





ぼそっとそれだけ呟くと自らの机になんとかたどり着き、そのまま糸が切れたように突っ伏してしまった。





「ありゃ駄目だなー。
完全死んでる。」
『あそこまでテンション低い高尾君なんて、想像もつかなかったよ。』





と、心配しているのかと思いきや、珍しいモノを見るような目で高尾を見ていた。





「ウイーッス…」





ガラリと扉が開いたと思いきや、高尾同様にテンションが低い我妻が現れた。





「うわ、ワガツマンもかっ!!」
『バレー部の顧問だもんねー、』





生徒のみならず、教師までもこの状態。





「おーし、出席はぁ…いいか。
うん、全員居るな。居ない奴手ぇ挙げろー。」
「いや、居ないんだから無理だろ。」
『ちーちゃん、ツッコまないで。』

「先生、居ないから手ぇ挙げられませーん。」
「おーい、吉原の分際でツッコむなぁ。
じゃあ放置で、」





ちーちゃんにストップをかけたが、吉原君がツッコんでしまった。
我妻はそれだけ言うと教卓に突っ伏した。
周りを見渡せば、高尾や我妻の様に机に伸びている生徒が多数。

ムサい男子軍が更にムサい雰囲気を醸し出している。
まさに地獄絵図だ。
 
それを見た女子軍は静かに机を端に寄せていた。





「なんだよ、これ。」
『皆死んでるね。』
「体力ねーなーぁ。」





ガダッ!!!





「聞き捨てならねーぞぉお、園原ぁぁぁあ!」
「うおっ!
なんだよいきなり!?」

「俺等は運動部なんだっ!
朝から汗水流して練習してんだっ!」
「いや、あたしも朝から汗水流したから。」
「…。」

「おーい、戦慄すんなー。」
『ちーちゃん、そっとしておいてあげよう?』
「んー。」





園原の言葉に先ほどより潰れた男子達だった。



キーンコーンカーンコーン





「じゃ、俺は天国へいく。」
「どういう意味だ、ワガツマン!」
「多々良、俺は…寝る。」

「はぁあ!?意味わかんねーよ!」
「おれ、1限授業ねーんだ(キラッ」
「裏切り者ぉぉお!!!」





爽やかな笑顔で言い放った一言でクラスの男子が嘆いた。





「じゃ、お前等は寝るなよ〜。」

「ワガツマンのあほー!」
「コノヤロー!」
「だから彼女できねーんだよー!」

「最後の誰だコラァッ!」





散々な言葉を浴びせられながら我妻は教室を後にした。





「はぁあっ〜」
『あ、高尾くんおはよ、』
「んー、はよー。
あれ、寝てたのバレてた?」
『んーん、ちーちゃんが顔に落書きしようって言ったかr「コラッ##MANE1##しー!」』

「そーのーはーらー…」
「あ、いっけないプリント提出しないと、じゃっ☆」





凄い速さで高尾を突破した。
しかし、高尾もそんな園原を追いかける気は毛頭なかったようだが…





『ちーちゃん、逃げ足はやっ…』
「陸上部なだけあるな、」
『そういう、』

「ところでさ、オウジ。」





さっきと少し声色が違うことに##MANE1##は気付いた。

何か疑っている様に、顔をのぞき込まれる。





『どうしたのいきなり、』
「んー、さっき寝てた時に思ったんだけどさ…」





ガシガシと頭をかきながらいつもの調子で語りかけるが、頬杖をつき##MANE1##を見るなり目を細めた。





「何か俺らに隠してなーい?」
『え、』
「オウジさ、朝来るの早くない?」





俺より早いよね?と更に付け足す。
その瞬間##MANE1##はピクリと肩を動かした。

そんな顔を高尾は面白い物を見るように笑みを浮かべながらながめていた。





『そうだよ、私家が近いし、…それに練習もしないと、』
「あの時間って体育館居るのオウジと”緑間“くらいだよね?」





“緑間”と少し強調して言うと、また##MANE1##の肩が跳ねた。





『うん、だけど挨拶するくらいだよ…』
「ふーん、ホントに?」
『うん、』
「ならいーけど、なんかあったら言えよ?」
『ありがとう、』





この会話を最後に高尾と##MANE1##は今日一日話すことはなかった。
いや、話さなかったのではなく、##MANE1##が一方的に避けていた。

































「あれ、高尾ー###MANE1#は?」
「オウジならもう体育館いったぜー。」
「え、早っ、」





ノート貸してもらおうと思ったのにな、とボヤきながら部活へ向かう準備を始めた。





「なー、園原…」
「ん、なんだよ。」
「明日さ、30分早く学校これるか?」
「あー、まぁ別に大丈夫だけど、」





なんでだ?と首を傾げている。





「いや確かめたいことがあってな。俺らのオウジ様の秘密を…」
「##MANE1##の?」
「そ、」





未だに納得のいかない顔をしている園原だったが、とりあえずついてくれば分かる、と言って納得させ、高尾は体育館へ足を進めた。





(あー、気付ちまった…)
(たまたま見えたんだけどさ、)
(あれ、オウジの右腕にあるのは確かに痣だった…)
 
 
 
 
 
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