夏のある日に、この恋を。
□2話>>修学旅行、前日>>2
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不安はつきまとう。
小さな事を気にしてしまっいては、この先に進めない。
それはとても大きいし、怖いから。
負け戦だと決まったようなことだから。
それでも、叶えたいのなら――――立ち向かうしかない。
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>>修学旅行、前日の話>>2
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どれだけその愛が本物だろうと、どれだけ時間がたってようと、大きな壁が立ちはだかる。
それに立ち向かうには、とてもたくさんのモノを敵にまわさなくちゃならない。
でも、そんな選択をする奴を、素直に尊敬できる。
だから、その愛を本物にするためなら、なんだってしよう。
あの夏≠フような思いを、味わってほしい。
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きーんこーんかーんこーん。
間の抜けたチャイム。
生きてきて聞き飽きたほどの旋律が、私の耳にゆっくり浸透する。
「……じゃあ授業はここまで。次はホームルームだから、担任の先生の指示に従って下さい」
禿げた世界史の教師が教壇から降りる。
委員長の「礼」の合図と共に、教室は一斉に騒がしくなった。
そう。誰もが明日からの沖縄合宿を楽しみにしていることは、一目瞭然だ。
だけど私は、彼らの言葉には耳を持たず、教室を一人抜けてい行く。
――ホームルームが終わった後に、ちゃんとメールした。返信は……こなかった。
保健室にいるであろう《彼女》を思い、一抹の不安がよぎる。
あそこで休んでいいのは一コマのみ。なら、長くても一時限目の終わりには戻ってくるはずだ。
なのに戻ってくる気配はない。
……おかしい。
やっぱり彼女の身になにかあったのだろうか。
きっとあったんだ。あったに違いない。
職員棟一階、保健室。
彼女はあそこで苦しんでいるのだ。
急行したそこは、意外と静かだった。
震える指を扉に掛ける。
そして、思いっきり開ける。
ガラガラガラ! と子気味良い音をたて、扉は全開に。中が一目瞭然な状態だ。
しかし、自身が認識したのは、意外な人物だった。
「……やぁ。今日は千客万来だね」
そう言ってのける人物は
「……横山、くん」
彼女――霧村夏美――の幼なじみの少年だ。
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