夏のある日に、この恋を。

□2話>>修学旅行、前日>>2
1ページ/3ページ




 不安はつきまとう。

 小さな事を気にしてしまっいては、この先に進めない。

 それはとても大きいし、怖いから。

 負け戦だと決まったようなことだから。

 それでも、叶えたいのなら――――立ち向かうしかない。



+--+--+--+--+--+--+--+--+--+

>>修学旅行、前日の話>>2

+--+--+--+--+--+--+--+--+--+



 どれだけその愛が本物だろうと、どれだけ時間がたってようと、大きな壁が立ちはだかる。

 それに立ち向かうには、とてもたくさんのモノを敵にまわさなくちゃならない。

 でも、そんな選択をする奴を、素直に尊敬できる。

 だから、その愛を本物にするためなら、なんだってしよう。

 あの夏≠フような思いを、味わってほしい。



□■□■□■□■□■□



 きーんこーんかーんこーん。

 間の抜けたチャイム。

 生きてきて聞き飽きたほどの旋律が、私の耳にゆっくり浸透する。

「……じゃあ授業はここまで。次はホームルームだから、担任の先生の指示に従って下さい」

 禿げた世界史の教師が教壇から降りる。

 委員長の「礼」の合図と共に、教室は一斉に騒がしくなった。

 そう。誰もが明日からの沖縄合宿を楽しみにしていることは、一目瞭然だ。

 だけど私は、彼らの言葉には耳を持たず、教室を一人抜けてい行く。

 ――ホームルームが終わった後に、ちゃんとメールした。返信は……こなかった。

 保健室にいるであろう《彼女》を思い、一抹の不安がよぎる。

 あそこで休んでいいのは一コマのみ。なら、長くても一時限目の終わりには戻ってくるはずだ。

 なのに戻ってくる気配はない。

 ……おかしい。

 やっぱり彼女の身になにかあったのだろうか。

 きっとあったんだ。あったに違いない。

 職員棟一階、保健室。

 彼女はあそこで苦しんでいるのだ。

 急行したそこは、意外と静かだった。

 震える指を扉に掛ける。

 そして、思いっきり開ける。

 ガラガラガラ! と子気味良い音をたて、扉は全開に。中が一目瞭然な状態だ。

 しかし、自身が認識したのは、意外な人物だった。

「……やぁ。今日は千客万来だね」

 そう言ってのける人物は

「……横山、くん」

 彼女――霧村夏美――の幼なじみの少年だ。



□■□■□■□■□■□
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ