掌編小説置き場。
□おさななじみ。
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イマドキの女子高生はこんなのなのか……?
わざわざ彼氏とうまくいっていることを伝えに、家に押しかけてくるのか?
――おいおい、そりゃねえよ。
「と、いうわけなのよ♪ だからこのネックレスしてるの♪」
さっきっから声が弾みっぱなしだ。そんなに自慢したかったのか?
それをなんで俺に……。
この真夏でクソ暑い日に、なぜ俺が聞かねばならん。
いや、考えるだけ無駄だろう。頭痛がしてくる。
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてるよ、ずっと」
何一つ頭ン中に入ってこないけどな。
「じゃあなんとか言いなさいよ」
「なんとかって何だよ」
「その、話の感想? とか」
おいおい待ってくれ! そんなん目眩モンだぞ! しかも『とか』ってなんだよ!
そう、だな……。気の利いた言葉を選ぼう。じゃないと殺されかねないからな。無難なところで行くと……。
「うまくいってるみたいで、よかったよ」
どや!
これで手出しはできまい。
「……うん。ありがと」
どうやら失敗したらしい。
地雷を踏むような発言はしてないはずなんだけど……。
「帰る」
なぜ、こうなった。
理由がわからん。
「……じゃあね」
…………。
いやまあ、涙目で振り向かれると、罪悪感覚えるな。
――――残念ながら、心当たりは、一つほど。あるっちゃある。
幼なじみって『仲良すぎて恋愛ができない』みたいなイメージあるから、こういうの変かと思うけど、でも。
「――なあ」
「なによ」
振り向かない彼女に手を伸ばし、ネックレスを掴む。
パチッと音がして、鎖がほどけ落ちる。
「――――え?」
理解不能という声。気にしない、気にしない。
そして、そのままゆっくり彼女を抱きしめる。
「スキだ、×××××」
きっと彼女は、嫉妬して欲しかったんだろう。
だからうちに来た。ネックレスまで付けて。
だから、今だけは彼≠フモノはいらない。
触れ合うのは、二人の体だけでいいから。