掌編小説置き場。
□ideanote
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放課後。教室には、二人の少女がいた。ポニーテールの快活そうな少女と、ショートカットで真面目そうな少女だ。
放課後といっても、今日はテスト明けの金曜日。お昼前に放課なので、ほかの生徒は遊びや買い物に行ったり、家で惰眠をむさぼるために帰ったりしているのだろう。
気楽な彼らと違い、教室の二人はどこかどんよりとした空気がある。
理由の一つは日直だったからだ。
日直の仕事というのは厄介であり、テストの日も構わずにやらなければならない。ゆえに二人は疲れている。
しかし、その仕事も終わり。やっとだ。やっと。
「夏美、今日帰り31よろうよー。暑くってさぁ」
そう呼びかけたのはポニテの方。リボンを外し、シャツのボタンを一つあける。ふくよかな谷間が覗くが、本人が気にした様子はない。
「うーん、わたし、今日ちょっと用事あるんだよね……。ごめん、千秋」
そう答えたのはショートの方。夏美、と呼ばれた少女だ。夏美はチラッとポニテ――千秋と呼ばれた――少女を、特に胸をみて、自分の胸を見て、
「…………はぁ」
と小さくため息をついた。
それに気付かず、千秋は返す。
「そっかぁ。残念だな〜。じゃあ、今度行こうな!」
「うん、今度ね。千秋のおごりで」
「へ?」
「古典のテストの点数でわたしに勝てたら、わたしがおごってあげる」
「うぐぐ……」
「冗談だよ」
そう言って夏美は、カバンを掴む。
その拍子に、一冊のノートが落ちたことに気付かず、
「じゃあ、お先に。テスト終わったからってだらけないでね」
と、パタパタ帰ってしまう。
「あ、夏美、ノート落としたぞー?」
……帰ってしまった。
とりあえず、ノートを拾う千秋。
届けるべきだよなぁ〜、と思いつつも、興味と暇つぶしが優先され、開いてしまう。
――――このノートを拾ったことが、始まりだったとは知らずに。