Treasures

□ずっと、想い続けるから
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ガシャンッ…!

外にまで響く破壊する音に、私は倉庫の壁に身体を預けて、音が止むのを待つ。
しばらくして音がやっと止む。
私が倉庫の中へと足を一歩踏み出すと、倉庫の中にあったもの、壁や窓が全て破壊され尽くし、その中心に私よりも大きいロボットが肩で息をしながら立っている。


「……バリケード…。」
『…っ。』


彼に声をかければ、ギラギラと鈍く光る欲望を孕んだ赤い瞳が、私を捉えた。
その瞳に怯むことなく、私はバリケードの側まで行き、わずかに損傷している手に触れ、目を閉じて頬を寄せた。










「…もう少し、自分を労わりなよ。バリケード。」
『……貴様には関係ない。』
「それでも…痛々しくて見ていられないよ。」
『フン、俺は俺の好きなようにやる。』
「……。」


バリケードの手をリペアしながら、私はそう話すがバリケードは素っ気無く返すだけだった。
いつもそうだ。仕事の空き時間にバリケードに会いに来る度、彼は何かを破壊して自分を傷つけている。 私が何を言っても、それは変わることがない。
バリケードは元々破壊衝動が仲間の中で強いらしく、その衝動が満たされるまで破壊することを止められない。仕方ないことなのだ。
だけど、それだけじゃないことも知ってる。


「……忘れることはできないの…?」
『…忘れるものか……あの高揚感を感じるために、俺はこの面白味のない星に留まっているのだぞ………絶対に忘れない…!』
「………。」


頑なな彼の決意に、私は無言で返した。
バリケードには忘れられない人がいる。
彼の中にある破壊衝動のせいで、故郷の星にいた時から避けられ続けてきて、誰からも向き合ってもらっていなかった彼。
そんな彼を真正面から受け止め、破壊衝動があることを認めながら、彼の苦しみを和らげた人がいた。
その人を傷つけながらも、彼はその人のことを想い続けて、その人が幸せになれるよう自分に関する記憶を消し、その人の前から姿を消した。
破壊だけしか苦しみを和らげることしかできなかった彼が、自分と向き合ってくれる人を突き放してまで、その人の幸せを望んだ。
忘れるはずがない。忘れることなどできない。
正直、その人が羨ましい……私は、バリケードの瞳に映ることはないから。


「……私じゃ、代わりになれない?」
『…何だ?』
「………自分を傷つけてまで、会いたいって気持ちを抑えているんでしょ?だったら、私にその気持ちをぶつけることはできない、の……?」
『……はっ…!』


ガシッ!


「ぁぐっ…!?」


鼻で笑ったかと思うと、バリケードは私の首を二本の指で掴み、私の身体を高く持ち上げた。
強く首を掴まれ、私は息をすることもできなくなり、口端から唾液が垂れ落ちた。


『…掴むだけで死ぬような虫けらに、今更興味などない。ましてや、高揚感など感じるに値しない……!』
「…か、はっ……!」


乱暴に地面へと落とされ、私は膝を着いて咳き込む。
乱れる呼吸を整えることなく、バリケードを見上げると赤い瞳が私を見下ろしていた。どこか、悲しげな感じだった。
その瞳に胸が締め付けられ、私はバリケードの手に頬を寄せて謝る。


「…ごめん、なさい……。」
『………。』
「……でも…。」
『……まだあるのか…?』


素っ気無く言われる言葉に、胸がズクンと痛むけれど、私はその欲望を孕みながらも、悲しさを含む赤い瞳を受け止める。


「私……バリケードの側に居続けるよ…。」


あなたにどう思われようと、忘れられない人がいようと、突き放されようと、殺されようと、私はバリケードの側にいる。
ずっと、想い続けるから………













馬鹿な虫けらだ。
俺のことを何も知らないくせに、俺の側に居続ける。あの虫けらと同じように、俺と向き合おうとする。それが、余計に俺の中の破壊衝動を高まらせていることも知らないで。
あぁ、そうだ。俺はこいつを破壊したい。破壊したくてたまらない。
どこまで俺のこの衝動に耐えられるのか、試したくてたまらない。
自分で言っているように、その命が終わるまで俺の側に居続けるのか、それとも命を守るために俺から離れていくのか、こいつを試してみたい。




だけど、このままでいたい。





俺の側に居て、俺の傷を見て悲しんで、俺をその瞳で映して、俺を思い続けるこいつと、ずっとこのままでいたい。
はっきりとしないこの関係のまま、こいつと一緒にいたい。こいつを手放したくない。






今度こそ、最後まで俺のものであってほしい。


































感想的な。


オイこら俺を萌え殺す気か。なんだこれ、感動したんだけど。どーしてくれるんだ。

バリさんは本当に壊したいものほど壊せない人なんだなと思った。ぶっちゃけある意味拷問かもしれませんね。
それでも自分じゃなく相手を思って、さらに幸せを願って、その幸せっていうのが相手の中から自分を消し去る事でしか実現できないとしても、それを実行した。
悲しくて強い人だと思った。

なんやかんや言ってるけど、後悔してないとは思うけど、バリさんなりに葛藤してたら萌える、俺が。
もーバリさん健気だな〜。あれ、健気なの?一途?なんというか何を言いたいってごちそうさまでしたって言いたい。


素敵な小説ありがとうございました!!

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