Short Story in TF

□とある航空参謀の独白
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オートボットとディセプティコン。
サイバトロン星に生きるのはこの二つの種族だけ。
同じオールスパークから生み出された兄弟であるにも関わらず、どうしてこの二つの種族に”区別”されるのか。
それを疑問に思うヤツはいない。
ごく当然のことであり、覆す事のできない事実のようなものらしい。
俺がディセプティコンであることに疑問を感じているわけじゃない。

どうしてオートボットとディセプティコンが存在しているのか、ということだ。

この二つの種族の違いを具体的に述べよ、と言われて答えられるヤツは多くない。
いたとしても、ヤワな鉄屑だのプライムの腰巾着だの、そんな侮蔑と軽蔑を滲ませる、非常に曖昧な言葉だ。

しかし言われればそうかもしれない。
俺たちディセプティコンは偉大なプライムの一族を崇拝しているわけじゃない。
その手腕や偉大さ、才能や実力は認めているが、しかし俺たちはディセプティコンだ。
オートボットとディセプティコンの、唯一にして絶対の相違点は、プライムにつくかメガトロンにつくか、ただそれだけだった。


ディセプティコンはオートボットと相反する存在で共生こそしているものの、両者の間には不可視の壁、それか溝のようなものがある。
それは太古の昔から存在していた。
そしてそれは壊される事も埋め立てられることもなく、あり続けている。
それはサイバトロン星にディセプティコンとオートボットが存在する限り、存在し続ける。
どうこうできるもんじゃない。
どうこうしちゃいけない。
その壁を破壊し、溝を跳び越えるということは、他方の領域に侵入し、掻き乱すということ。
それは長い間保たれてきた秩序を打ち砕く大罪だ。
お互いに干渉しすぎず、無視しすぎない。
生かさず殺さず、と言えば物騒だし極端だが、つまりはそういうこと。


サイバトロン星の不可侵の秩序。
オートボットはディセプティコンを監視し、
ディセプティコンはオートボットを監視せよ。
全ては母なるサイバトロンの平和の為。

平和という建前を掲げ、自分の種族以外を疑い続ける、恐ろしい世界が、サイバトロンという星の姿だ。
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