Short Story in TF

□最後に、
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まったく、飽きもせずよくやったものだ。
始まりを思い出すには今まで時間が流れすぎた。
始まりは記憶の海の果てに霞み、終わりが目の前で憮然と見下ろしている。
この星の生命体と比べ、知能的にも機能的にも遙かに優位に位置する我らは、当然全うする生も長い。
しかし、死は訪れる。遅かれ早かれ、永遠の眠りは背後から正面から、我らを包む。





その長い生の、半分以上を、俺は何に費やした?
ずっと、長い間、憎み、蔑み、許しも容赦もなく、ただ破壊した。
全てを。我が一族の繁栄と勝利の為に。
それが俺の生きてきた理由。存在意義。
俺の意志でもあったはずだ。ああ、俺の野望だ。
力で支配し、恐怖で繋ぐ、揺るぎない国家。
そうすれば、下らない諍いなど起きない。恐れればいいのはたった一つ、この俺だけで済む。








お前は甘い、オプティマス。
お前達は持ちすぎている。感情を。
俺たちを欠陥品というのは、お前達が持ちすぎているからに他ならない。
持たなくても生きていける感情を、持ったが故に苦しみ、悩み、足を止める。
それが愚かだと言うんだ。


嗚呼、オプティマス。我が半身よ。
お前は愚かだ。何故、この星を選び取る。ここに住まう命を尊ぶ。
何故、あの星を選ばない。故郷を、母なる星を。
お前と俺が生きた星を、何故だ。
…俺は覚悟などできていた。どんなに足下に死体が転がろうとも、それが誰の死体であろうとも、その上の玉座に座る覚悟はできていた。
お前は違ったな。
お前らしいな、オプティマス。





星は消え、身体は動かない。
俺に残ったのは、俺という命だけだ。
それは今まで、憎しみと侮蔑と無慈悲で満たされてきた。許しもなかった。
これほどまでに極端で単純な感情を持ち続けた事はない。本当に、よくやったものだ。

しかし最後なんだ。
そんな感情で締めくくるのはディセプティコンらしいだろうが、最後くらい、穏やかに終わっては駄目だろうか。
俺には許されていないとしても、別に許しなど乞おうと思わない。罰があれば受けよう。
もうすぐ死ぬんだ。多目にみてくれ。






すまんな、オプティマス。
こんな顔を見せてしまって。
最後ぐらい、笑って眠らせてくれないか。








このような情けない顔、お前以外には見せられん。
…じゃあな、我が友よ。

















「…何故だ」


くすんだ灰色の髪が視界から消えた時、蒼い男は呟いた。


「こんな時に、そんな笑顔で、笑うモンじゃないだろう…」


最後の最後に、お前を失った私に、お前はそんな笑顔を遺して。
何でそんな風に笑うんだ。













最後に、(泣きそうな笑顔を遺していった)

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