死に花が咲く

□死神アリスの作り方.前編
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―――――カチャン



ティーカップのような陶器を置いた音がした。




真っ黒な部屋。


といっても壁が真っ黒なわけではない。
ただ、夜にもかかわらず電気を付けていないだけ。


薄暗い部屋。

月明かりだけが唯一の光。


そんな部屋にこの部屋の主と思われる一人の少女がティーカップを持っていた。

普通の少女。



だが、彼女は


紅かった。



目も唇も髪につけたリボンもワンピースも



紅かった。




あの有名な童話のアリスを真っ紅に染めたような、



そういう少女だった。



「ねぇ」



真紅の唇を薄く開けて少女は声を出す。

誰かに話しかけているようだ。

椅子は2つあるものの、誰もいない。しかし、確かに少女は誰かに向けて声をだした。


「何?アリス」



どこからともなく声が聞こえた。


アリスと呼ばれた少女は

「人間になってくれないかしら、クラウス。猫に話しかけてるなんて馬鹿みたいじゃない。」

と文句を言いつつ、黒猫に目をやった。

真っ暗で見えなかったが、そこには黒猫がちょこんと座っている。

「むぅ、人間になるのは大変なんだよ?…………………はいはい。」



ぽんっ



そんな間抜けな音と共に煙がもくもくと出てくる。


その煙が消えたとき椅子には


黒髪の青年が座っていた。



「あれ?」


アリスは首を傾げる。


「ん?どうかした?」


クラウスもつられて首を傾げた。


「前はもっと子供じゃなかった?」

「あぁ……ボクは状況に応じて、姿かたち変えれるんだよ。」

へぇ、と適当に相づちをうつアリス。いつもの事だからか、気にせず話を続けるクラウス。

「これはなかなか出来ないんだからね!アリス、誇っていいよ!」

「他の死神は使い魔なんか持っていないわ。」



吐き捨てるようにアリスは言った。




「え…………じゃあ、なんで?」




「私を監視するため。仕事をちゃんとするように。運ばなきゃならない魂を勝手に転生させないように。」



静かにアリスは言う。自分に言い聞かせているように、上層部にはく愚痴のように。




「ねぇ、アリス。なんでアリスは死神になったの?」



クラウスが尋ねると待ってましたと言わんばかりの笑顔でアリスは答える。






「昔話をしましょう。」




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