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□きみでとけたい
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「よお、谷田部。」
「こんにちは、谷田部くん。」
「よお、三好。将軍も、こんにちはっす。」

今日は古参メンバーがちらほら見える程度の黄巾賊アジトに、正臣と三好は揃って学校帰りにやってきた。

「こら谷田部ー。そこは俺に先に挨拶するとこじゃないか?」
「ええー?別にどっちでもいいじゃないすか。」
正臣と谷田部が冗談を言い合う間で、三好はふわふわ笑っていた。

その後、正臣は他の古参メンバーに呼ばれていったので、ステージのそばでしゃべって待つことになった。

ふいに三好は何か思い出したような顔をすると、手に持っていた袋を持ち上げてみせた。
レジ袋の中には、コンビニの菓子パンやおにぎりがいくつか入っている。
「……?昼飯の残りか?」
谷田部がきくと、三好は頷いた。
「弁当とお財布忘れちゃって。困ってたらクラスの子が分けてくれたんだ。でも、せっかくもらったのに、余っちゃって。」
そう言って三好は照れくさそうに笑った。
食べきれないほど貰えるなんて、さすが愛されてんなぁ。と、谷田部は思う。
「良かったら、一緒に食べない?」
「いいのか?」
三好は大きく頷いた。
「じゃあ、いただこうかな。」

少し悩んでから、谷田部はカツサンドをもらった。三好はチョコレートホイップをはさんだクロワッサンを選んだ。
「可愛らしいモン食うんだな」と、からかったら、三好は「甘いもの好きなんだ」といってはにかんだ。

谷田部はアジトのステージに寄りかかり、三好は腰かけてパンを食べた。豪快にカツサンドにかぶりつく谷田部の横で、三好はクロワッサンを両手でもってもふもふと食べていた。
ハムスターみたいで可愛いな…。
横目で三好を見ながら谷田部は思った。

「?どうかした?」
いつの間にかガン見していたらしい。不思議そうに三好が首をかしげた。「え、あー、いや、別に?」
慌てて前に向き直りパンを食べようとしたが、すでになくなっていた。食べ終わっていたことに気づかないほど集中していたらしい。
わたわたと手を降る谷田部を見て、三好はふふ、と笑った。「笑うな!」と言いながら、ああもう可愛いなあ!と谷田部は少し混乱した頭で思った。

三好はニコニコしながら再びクロワッサンにぱくついた。チョコレートホイップに苦戦しながらも食べきったようだ。指についたクリームをちゅっと舐めとり、こちらを向いて少し恥ずかしそうに笑った。
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