中編格納庫

□IZAYOI-1-
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常に身に着けている剣の形をしたクロスのネックレス
何時頃から着けるようになったのだろう。
信心深い訳ではない
しかし、身に着けていると安心するので、むやみやたらと服を脱ぐわりにはクロスを外すことは無い

身に掛かりそうな闇を払拭するかの如く無意識にクロスを握りしめる

最近、どうもおかしいのだ
同じような夢をよく見る

しかも必ず甘い匂いがする

匂いのする夢なんてあるのかと思うが香水などを身に着ける習慣も無いし、部屋の中に花を飾るなんてこともしない。


今日は珍しく自分から誘った。この不思議な夢を確認するために。いや、深層では恐怖があったのかもしれない。それにしても幸せそうに眠る桜色の頭を見ると穏やかな気持ちになる。起きている時はあんなに煩いのに寝顔はかわいい。しかし、何のために呼んだのか、先に眠られては意味が無いではないかと一人愚痴るが既に夢の人となったものに何を言っても無駄だろう

眠る唇にそっと口づけて自分も暖かい腕の中に潜り込む。独りで眠るよりは良いのかもしれない。安堵のため息をつきながらそっと瞼を閉じた





頬を伝う暖かい感触。不意に唇を塞がれ苦しくなり口を開けようとすると口内に侵入してくる艶めかしい動き。ハッと気づいて瞼を開けるとナツの顔が目の前というか薄く閉じた瞼が見えた。

圧し掛かるカラダを思いっきり蹴飛ばす。突然の事にナツが目を見開きこちらを見た。


「朝から盛ってんじゃねー」


ナツはそんな言葉に屈するわけがなく。口角を上げ近寄ってくる。コイツの本質は獣だ。
一度目に付けた獲物を逃すなんてことはしない。


「んだよ。グレイだってシタイんだろ?」


下卑た笑みを浮かべながら近寄ってくるのはある意味身の危険を感じる


「おめーは朝から下品すぎんだよっ」


にじり寄るナツの気迫に押されて思わずベッドの端まで後退するが、捕まるのは目に見えている。


「グレ〜イ。お前が誘うように寝てんのがわりーんだ」


ナツの手がグレイの腕を取り思いっきり引っ張られナツの腕の中に飛び込む形になった。


「俺にはそんな覚えねーーーーんっ」


頭を抑え込まれてしまえば逃げようも無く、唇は簡単にナツのものに塞がれてしまう
口内を犯すように貪欲に求めてくる。逃げるように舌を引っ込めても追ってきて絡め取られる。そうしている間にもナツの手は敏感になった肌を這いまわり否応にも高められていく。


(って、そんな事してる場合じゃねーっつーの)

「んっ。ナ・・・ツっ。」


やっと口が解放されたと思ったら耳たぶを甘噛みし、耳の中に舌を入れてきた。ヌチャヌチャとした音が響きわたると思わず出た自分の声に恥かしくなり赤くなる。首元を這いまわる舌にゾクゾクとした感覚が全身を蝕んでいく。


「も・・やめっ。」

(やばい、このままだと仕事に行けなくなる・・・)


それだけは阻止しなくてはいけない。何と言っても今日はエルザ指揮のもとなのだ


「ナ・・ッ。仕事・・・」


ハッと気づいたのかナツの動きが止まった。


「こ・・・この状態で止めるのか・・・」


桜色の頭が項垂れお預けをくらっているのを見ると何とはなしに可哀そうになる。俺もそれだけコイツに惚れてしまっているという事なのか


「ナツ・・・仕事終わって帰ってきてからシヨ?」


ナツの顔を見ると真っ赤に染めあがっていて慌てて俺の上から飛び退きトイレに駆け込んでいった。
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