中編格納庫
□IZAYOI-1-
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「そういえばグレイ、今日はあの匂いしないぞ?」
ナツが出かける準備をすべくいつもの服を着ながら言った。
「そっか、サンキュ」
何も無かったことに安心するが、付きまとう不安に表情が曇る。霞み掛かっている記憶の一部を思い出そうとしてもかき消されてしまう。そんな俺を見兼ねてかナツが近づいてきた。軽くキスをして抱きしめてくるカラダが暖かくて安心する。この存在が愛しいのに、不器用過ぎる俺はうまく言葉に表すことができない。
「なぁ、そんなに不安なら毎日一緒に寝るか?」
「毎日、盛られちゃ俺のカラダがもたねーよ」
フッと笑う俺に『それもそーだな』と言ったナツはさっさと着ろよと言わんばかりに服を投げつけてきた
投げられた黒いタートルを着こみ白いロングコートを纏うと身が引き締まる。
「俺はルーシィんちにハッピー迎えに行ってくるな」
「おう、んじゃ駅でな」
笑顔で出ていくナツを見送りながら一人分の体温が無くなったことに少し寂しさを感じていた。
「らしくねーな・・・よし、行くか」
その日の仕事は特に問題という問題(街の一部を半壊してしまったのは言うまでも無い)も無く依頼を達成した。
一人40万Jも貰えたのだから、全員満足のいく仕事であった。特にルーシィなどは『家賃が払える〜』と言って小躍りしている始末である。
「よっしゃー、さっさと帰るぞー」
その中でも特に張り切っているのが桜色の髪をしたナツ
とにかく早く仕事を終わらせようとした結果街の半壊は90%ナツの仕業である。
「そう焦るなナツ。早目に仕事が終わったことだし、久しぶりに温泉でも入っていかないか?」
何度も言うようだが、エルザの発言は絶対である。
「だーーー、マジかよ」
不服そうに顔を歪めるナツにエルザの背後に般若が見えたのは言うまでもない
「久しぶりに温泉いいわねー」
「たまにはいいかもな」
ナツ以外は乗り気なのでは仕方ない
渋々と引きずられるようにして着いたのは鳳仙花村。以前来た時は何故かまくら投げで大けがをした二人。今日こそはリベンジだとばかりに張り切りだしたナツに飽きれるメンバーだったがそんな事、気にしてもしょうがない。ようは楽しんだもの勝ちであるのだから。