中編格納庫

□IZAYOI-2-
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『グレイ・・・』










『ナツ・・・?』

急に浮上する意識。桜色の髪がフワフワと舞って空から暖かい光が注がれてきた

桜色が段々と遠くに行ってしまうようで追いかけようとするがカラダが動かない

「あっ・・・」

目を覚ますと見知らぬ部屋の中だった。

「ここは?夢じゃなかったのか・・・」

重い頭を起こして部屋の中を見回すが自分が寝ているベッド意外にテーブルとイスしかなかった

真っ白な部屋の中は天窓があるのみで外の様子を見ることができない

カラダが異常に重い気がする

ゆっくりと上体を起こしてみると自分の両方の手首には鎖が繋がれていた

「んだこれ!?」

鎖の元を辿ると首元に繋がっていた。

『首輪!?』

頑丈そうにできた其れは魔装具の一種なのかもしれない。魔力を放出することができないのだ。

ガチャっという音とともに唯一の出入り口であろうドアから誰かが入ってきた

「おや?もう目覚めたのですか。ふむ、効果が持続するのは1日というところでしょうか。継続利用も1週間程は大丈夫そうですね。」

片眼鏡をした人物は手を顎に寄せて考えこんでいる。

「おい、コイツは俺のおもちゃだ。あまり薬漬けにすんじゃねーぞ」

そういいながら入ってきた奴は自分より大柄で真っ黒の髪が大雑把に伸び眼光が鋭い。突如、隣に腰掛け太い腕を首元に絡めてきた。

振り解こうともがくがカラダに力が入らない。反対に抑えこまれてしまった

この状況からして逃げられそうにも無い。何故自分が此処にいるのかもわからない。

「お前ら誰だ・・・俺をどうする気だ?」

「これは失礼。私の名はソルです。そして、あなたの傍にいるのが鉄竜のガジル。あなたに危害を加えるつもりはありません。大事な『test object』なのですから。」

「test object?」

「被検体、試験用の検査対象でございます」

「何故、俺を・・・?」

「ふむ、お話しても差し支えは無いでしょう。あなた様は北のご出身でございますね。ある森に小さな赤い花が咲いていたのは御存じのはずです」

そう言いながらソルは近くの椅子に腰かけた

「その花はそのままであればただの花でした。あなたは幼少の折、その花に触れたはずです。」

赤い花?まったく覚えが無いと言った方がよいのか。おぼろげな記憶を掘り返そうとするが花に一致する記憶が無い。

俺の釈然としない顔をどうみたのかソルは短くため息を吐いた

「まぁ、良いでしょう。コレを作るためにあなたは被検体に選ばれたのですよ。もちろん、誰でもよかったわけじゃありません。あなたは以前、幼少の時分にもこのプロジェクトに参加していたのですから」

呆然とする自分に対して隣にいたガジルの手が顎に添えられ無理やり顔を向けられた

「お前はオレのもんだからな。せいぜい、自分の運命を呪うがいい」

ガジルの手が首に付けられた鎖を引っ張った為受け身を取る前に前方に倒れこんでしまった

「痛っ」

奴をきつく見据える

「ほぉ・・・。俺様を睨むとは良い度胸だな。」

睨む目を離さないままその場に起き上がろうとするが、カラダにうまく力が伝わらない

「この1週間、ほとんど寝たきりだったからな。いや、正確には違うか・・・ふん。いずれにせよ逃げられやしねー観念するんだな」

ガジルは太い腕を振り上げてきた

ガツっという音とともに頬に感じる痛みを感じて後ろに吹き飛ばされる

背中を打ち付けてしまい思わず咳き込んでしまった

「ゴホっゴホッ・・・・」

「まだまだ俺を楽しませてくれるんだろ?」

指を髪に絡ませ強制的に上を向かされた。プツプツと何本か髪が抜ける感覚がして顔を歪めるが遠慮の無い手は更に持ち上げてきた

「楽しみだなぁー。」

「ガジル、そろそろマスターが来ます。行きましょう」

「ちっ、しゃーねーな」

掴んでいた髪が離されその場に崩れ落ちる。

こんなものさえ無ければ・・・

扉に消えようとする二人の背中を見つめながら自分の手を首元に寄せ魔装具を引きちぎろうとするがびくともしない。

パタンと云う音とともに一人残される部屋の中

逃げられない?

否、逃げてみせる。必ず。
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