中編格納庫
□IZAYOI-2-
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あれから何日経ったのだろうか。いや、今自分が居るのは一体どこなのか
頭の奥に巣食う闇に飲み込まれそうになる
フェアリーテイルという魔導士ギルドに居たのは一体いつのことだったのか
ギルドの仲間の顔もおぼろげになってきている
ただ、桜色を思い出すと急に鮮明になる記憶
隣で眠っているのは無造作に黒髪を伸ばし、その瞼の下には鋭い瞳をしているガジルである
男だからというのがあるだからだろうか貞操観念というものは低いのかもしれない。
果たしてそれだけなのか?
何とはなしに手を伸ばしその黒髪に伸ばしてみる。撫でるように梳くと髪が絡まっているらしくすんなりと手が通らない
口端を上げ、軽く笑うと絡まった髪を解こうと夢中になっていると何時の間に起きたのかガジルがこちらを見ていた
「なっなんだよ」
「いや?」
薄く笑うガジルは最初の頃の印象とだいぶ変わってきていた
荒々しいまでに自分を抱いてきていたアイツがいつの頃からか僅かな優しさを感じさせるようになったのだ
さすがに首に嵌められている魔装具は外していないが、今ではあの忌々しい鎖は無い。
しかも、その鎖を外したのがまた笑えるのだ。
ある日、俺が『手が擦れていてー』とポツリと呟いたのを聞いていたのかアイツが手に繋がっていた鎖を引きちぎって食べ始めたのだ
俺が引っ張ってもビクともしなかったソレをいとも簡単に引きちぎった事にも驚いたが
それを食べるなんて思いもしなかった
だけど、その鎖をむしゃむしゃと美味しそうに食べるその顔がなんだか幼子のようで思わず笑ってしまった
『てめー笑うんじゃねー』
『わりー。なんだか美味しそうだな。鉄ってうまいのか?』
『うめーよ。俺の力の源だからな。おかげで貧血とは無縁だ』
『なんだそれ』
久しぶりに笑った時、ガジルも一緒になって笑っていた
それでもカラダを求めてくる時は強張ってしまうのはどうしようもない
鎖が無くなって幾分自由になったとはいえ、拒否するという考えができなくなってしまっていたのだ
『それにしても何で鎖喰ったんだ?』
『あ?喰いたかったからに決まってんだろ』
そんなの答えになんてなってない。
ただ、ガジルの中でなにか変化があったのか、強制的なことをすることが無くなってきたのだ
「ふぁーあ、そろそろいかねーと」
欠伸をしながらそう言うとガジルはカラダをおこしてベッドの下に散らかった服を手にとり着始めた
その様子をボーと眺めていたら目があった
「お前も来るか?」
「へ?」
思わず間抜けな答えをしてしまった。なにせこの部屋から外へは出たことがなかったのだから
「ただし、俺様の傍を離れるな。それが条件だ」
「お、おう」
もしかしたら、何かわかるかもしれないと思った俺は急いで散らかった服をかき集め袖を通す
ガジルは一体何を考えているのだろうか。真意はわからないが、抜け出すことができるきっかけになるかもしれない。
抜け出す?
どこから?
帰る場所があった筈なのに急に頭が霞みがかったようになってしまう
「おい、早くしろ」
「あ・・・あぁ」
ギュッと目を瞑ると桜色が見え頭の霧が晴れ渡る。帰ろう。フェアリーテイルへ・・・