小説

□愛が欲しい一人の嘘つき
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「今日もたくさん買うのがあって大変だったね、アルヴィン」

「まったくだよな、俺らに全部任せてあいつらは観光だとよ」

「まあ、たまには遊びたい気持ちも尊重しなきゃ」

「…俺らはいいのかよ」

「ん?」

「……っ、だから、俺らも俺らの時間てのが欲しいだろ」

「うん、欲しいよ」

「じゃあ、」

「だから一緒に買い物引き受けたんじゃない」

「…は?」

「僕はアルヴィンとこうして一緒に出かけてたわいもない話をするだけでも、一緒にいられて嬉しいし、その、で、デートみたいだなって、思ってるよ」

「…ジュード」

「……だ、だめかな?」


たくさん旅道具が入った重い紙袋を抱えているジュードが恥ずかしくて俯くと、横から荷物を掻っ攫われた。
慌てて荷物を取った彼の方を向けば、さっきまで荷物で塞がっていた左手をアルヴィンの大きな手が包み込んだ。


「アル、ヴィン?」

「一緒に居たいんだったら、荷物なんか持ってないで俺の手でも握ってろよ」


ぽつりとジュードに聞こえるか聞こえないかくらいの声がアルヴィンの方から聞こえる。


「…うん、わかったよアルヴィン」


本音を言って照れている彼の温かな手を、ジュードはしっかりと握り返す。


「これからも、ずっと握っててね、アルヴィン」

「…あぁ、ずっとな」


一滴のそれが、ゆっくりとジュードに振り向いたアルヴィンの目尻から離れて行くのを見たのは、道の傍らに咲く小さな草花だった。






END

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